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    2025年の崖を乗り越えて  Beyond 2025 Vol.1 DXを支えるプラットフォーム戦略とは

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    • 複雑化・ブラックボックス化した企業のITシステムが足かせとなり、2025年から毎年12兆円の経済損失をもたらす──。
      いわゆる「2025年の崖」は日本企業に突き付けられた深刻な課題である。デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組むことが、今求められている。これを支援するため、Dell EMCとVMwareは、DXを支えるプラットフォームの強化・拡充を進めている。それはどのような価値をもたらすのか。Dell Technologiesの黒田 晴彦氏とヴイエムウェアの服部 寿明氏に話を聞いた。

    • 経営からビジョンを発信することが、DXの出発点になる

      ──経済産業省が「DXレポート」の中で指摘した「2025年の崖」は衝撃的な提言として多くの企業に受け止められています。このインパクトをどのように見ていますか。

      黒田 世界に目を向けると、デジタルビジネスを展開する新規参入者によるゲームチェンジが進行しています。デジタル技術に対応できる企業とそうでない企業の“格差”は、競争力に大きな差をもたらします。「システム刷新を集中的に推進し、早急にDXに取り組むべきです。さもないと日本企業は生き残れない──」。DXレポートで指摘された危機感は多くの経営層の方も共有していることと思います。

      服部 今はIT部門ではなく、事業部門がクラウドの採用を主導しているケースが増えています。IT部門はもっと業務のほうに足を踏み出す必要があるでしょう。さらにセキュリティやコンプライアンスを事業部門で対応することは難しく、全社横断的にIT部門がリードすることがますます重要です。DXの流れとともに、IT部門に求められる役割も変化しつつあるのを感じます。

      黒田 「DXレポート」は、2018年5月に立ち上げた「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」の議論を基に作成されています。実はこの研究会にデルも招聘され、私も様々な意見交換をさせていただきました。当社が提供した情報もDXレポートの中に採用されています。

      研究会では、Dell EMCの調査結果に基づく日本と海外のDX推進の温度差についても議論となりました。日本企業のほうがDXに対する危機感は高いのですが、経営からのビジョンや戦略が未だ出せていない。これを経営から発信することが、DXの出発点になります。

    • ──DXの必要性は認識しているのに、なかなか前に進まない。その理由をどう捉えていますか。

      黒田 既存システム、特にレガシー化した基幹システムの維持管理に要する様々なコストが高止まりしているため、戦略的なIT投資に人材、時間、資金を振り向けられない、という声を多数伺っています。

      服部 維持管理コストの高止まりにはサービスレベルの定義の問題もあると思います。システム停止の際の業務影響をしっかり分析できている会社はとても少なく、結果として実は業務上停止時間を取れるシステムを必要以上に冗長化したり、メンテナンスに多大な工数がかかったりしていることが多いのが現状です。

      黒田 開発・運用・保守のポートフォリオを俯瞰して、会社全体としての優先順位を決める。ボトムアップ型の良さを生かしながらも、経営のリーダーシップによってデジタル時代を勝ち抜いていく、ITにかかわる新しい体制・文化づくりが大切になるのではないでしょうか。

    • 柔軟性・迅速性の低い既存システムがDXの足かせに

      ──DXレポートでは2025年に国内のIT人材が40万人規模で不足すると指摘されています。人材の育成も大きな課題ですね。

      黒田 メインフレームからオープン化への流れは10年、20年という時間をかけて移行していったため、人材の世代交代と技術の交代を、ある程度の余裕を持って行うことができたかと思います。しかし、現在は技術進化のスピードが非常に速く、世代交代する前に技術が変わってしまう。世代交代と技術スピードとのアンマッチが起きています。

      服部 事業の継続性を考えれば、既存のシステムも非常に重要です。DXが進んでも、これはゼロにならないでしょう。ここは堅持しつつ、若い人材がもっと活躍できる場を作っていく。組織のトランスフォーメーションが必要です。

      ──DXへの対応が求められる中、様々な変化の波が押し寄せているわけですね。そのDXを支えるITシステムに、企業はどのような課題を抱えているとお考えですか。

      黒田 基幹システムに限らず、既存システムの多くは柔軟性や迅速性よりも完全性を追求することが多く、結果として、新しいビジネスモデルを実現するための仕組みとしては、そのままでは活用が難しいケースが多いと思います。また、既存システムは、外部とのリアルタイム連携を前提に作られることは少なく、仮に、クラウドをベースに新しいAIやIoTのシステムを構築しても、今度はそのデータを従来のシステムと連携させるところが難しい。また、従来のシステム基盤に加え、新たなクラウド独自の基盤管理も必要となり、管理業務が増加してしまった、という企業も見受けられます。

      服部 新しいインフラとして定着しつつあるパブリッククラウドの活用にも問題があります。事業部単位でAzureやGoogle、AWSを使うことにより「クラウドサイロ化」が進んでいるのです。増え続けるデータやトランザクションに対応できるスケーラビリティ、システムの変更や新機能を迅速に追加できる柔軟性を、オンプレミスとクラウドにまたがってセキュアに実現できることが求められています。

      服部 運用負荷を下げ、俊敏性を確保するためには、自動化も重要なポイントとなります。

    • オンプレミスもクラウドも統合運用できる仕組みを提供

      ──こうした課題解決に向け、Dell EMCとVMwareはどのような価値を提供できるのでしょうか。

      黒田 ハードウエアに強みを持つDell EMCと仮想化技術をリードするVMwareがタッグを組み、Dell Technologiesとして革新的なプラットフォームを提供しています。サーバー、ストレージを統合したハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)に、VMwareの仮想化技術がコアソフトウエアとして組み込まれています。オンプレミスとクラウドにまたがるシステム、データ、セキュリティを一体的に運用管理することが可能です。

      服部 クラウドネイティブなアプリケーションと既存システムを適材適所で使いこなす。これを一貫性をもって、かつセキュリティを担保した形で行うために、オンプレミス側においては、ハードウエアも含めた自動化の仕組みが非常に有効です。VMwareとDell EMCが協業することで、それが可能になる。これこそが、協業による最大の価値です。

      黒田 両社の協業を深化させ、提供価値の向上にも努めています。ハード/ソフトの一体性強化はその1つです。検証済みの構成で導入可能であることはもちろん、ソフトウエアのバージョンアップやパッチ適用においても、すべてのVMwareのソフトウエアを含むコンポーネントのアップデートをバンドルして設計・テストの上でリリースしますので、管理者の作業を大幅に効率化することが可能です。

      オンプレミスとクラウド間のデータの移行や、各環境に分散するデータの統合バックアップについても、Dell EMCとVMware間で連携してベストソリューションを提供していきます。例えば、データのバックアップにおいては、Dell EMCは、特許を持つ可変長インラインの重複排除機能を提供しており、障害・災害対応などで大きな効果を上げています。

      また、今後、VMwareの機能を用いて、Dell EMCの物理ストレージの管理を行うことも可能になっていきますので、オンプレミスからクラウドまで、効率的な運用管理が可能になります。

      服部 VMwareではKubernetesを中心としたコンテナ管理基盤もインフラの1つと捉えています。しっかりとセキュリティを担保した形で仮想マシンとコンテナに対して、オンプレとクラウドにまたがってネットワークを統合的に制御できるようにする。そんな世界観の実現を目指しています。

      この一環として、AWSなどパブリッククラウドを含めたすべてのインフラでファイアウオールの設定などを一括して行える仕組みも提供していきます。

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    • IoTを含めた運用自動化を進め、新たなチャレンジを支援

      ──両社の協業により、企業はどのようなビジネスメリットが期待できますか。

      服部 どれだけアジャイルにアプリケーションを速く開発できても、それを本番環境にデプロイするのに数週間もかかっていたら、競合に後れを取ってしまいます。提供するプラットフォームはクラウドのメリットをオンプレミスでも実現できることが大きなメリット。素早くアプリを開発して1時間でリリースする。アプリの開発・リリースサイクルを劇的に短縮化し、企業の競争力強化につながります。

      黒田 Dell EMCは企業のIoT戦略を支援するオープンソースプロジェクト「EdgeX Foundry」を2017年春に立ち上げました。ここで開発した機能もVMwareのソフトウエアと連携し、IoT活用に欠かせないプロトコル変換などをシームレスに行えるようにしていきます。これによって、IoTを含むエッジからデータセンター、クラウドまでトータルに1つのインフラとして統合制御できるようになり、インフラ管理者の作業の効率化・迅速化が可能になりますので、IoTやデータ分析によるサブスクリプションサービスなど新しいビジネスモデルも創出しやすくなるでしょう。

      服部 VMwareは統合的なデバイス管理・制御を実現するデジタルワークスペースプラットフォーム「VMware Workspace ONE」を提供しています。DXにはモバイル端末を最大限活用することも必要になります。モバイルアプリケーション、SaaSなどの戦略的な利用を促進し、多様な働き方をセキュアに支える仕組みを容易に実現できます。

      黒田 DXの推進とともに従業員の働き方改革も加速します。どこでも安全に仕事ができるように、Dell EMCはWorkspace ONEを用いた、セキュリティも利便性も高い仕組みを提供してまいります。両社はプラットフォームの開発段階から協業を進め、日本のお客様の期待に応えるべくサポート対応も強化しています。製品はグローバルに提供していくため、海外でのサポートはもちろん、国内では両社が連携し一体的にサポートを展開する体制を着実に構築しています。新しいインフラに対するサポートの不安も払拭できる。これも大きなメリットとなります。

      ──DXの実現に向けて、経営層は今後どのような点に留意していくべきと考えますか。

      服部 技術は常に進化を続けています。インフラもシステムもその進化に合わせて変化していく必要があります。今あるものをうまく使いながら、5年後、10年後を見据えた柔軟性を持ち続ける。そのためには、オンプレミスも含めて統合的に運用管理していくマルチクラウド戦略が有効です。

      黒田 経営のビジョンを実現するためには、それを支える技術が不可欠です。経営層とIT部門が一体となって議論し、新しい仕組みを育てていく。そういう会社が本当の意味で強い会社になるのだと思います。

      変革には痛みが伴います。しかし、そこで躊躇していたら、厳しい市場競争の中で生き残ることはできません。ITの構造改革と組織のトランスフォーメーションに取り組むことが、今求められています。今後もDell EMCとVMwareは緊密な協業によるシナジーを価値に変え、お客様のデジタルビジネスの実現と発展を強力に支援していきます。

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    • 日経BP社の許可により、2019年4月19日~ 2019年5月30日掲載 の 日経 xTECH Special を再構成したものです。