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    事例/設計・開発者の生産性を高める方法

    川崎重工業・船舶海洋カンパニーが専門職の働き方改革に選んだデバイスは

    • 取り残された専門職の働き方改革。柔軟に働ける仕組みをどう作るか

      世界中の有力企業と激しい競争を繰り広げる日本の製造業。今後も持続的な成長を遂げていく上では、日本の強みであるモノづくりの力をさらに磨いていくことが必要だ。特にポイントとなるのが、製品の設計・開発や製造に携わる専門職向けの業務環境である。海外の名だたるライバル企業と伍して戦っていくには、各部門のエキスパートが最大限に能力を発揮できる環境が欠かせない。

      こうした考え方のもと、専門職が働きやすい環境の整備を進める企業も少なくない。日本を代表する製造業として知られる川崎重工業・船舶海洋カンパニーはその1社だ。同カンパニーは、川崎重工業のビジネスを支える主要カンパニーの1つであり、国内では神戸(兵庫)と坂出(香川)に2工場を展開している。グループ全体ではLNG/LPG運搬船やタンカー、コンテナ船、ばら積み船、潜水艦、超高速旅客船「川崎ジェットフォイル」など、製造する船舶の種類も非常に幅広い。

      ただし、もともと同カンパニーでは、社内の設計・開発者向けのデスクトップ端末を、自前で組み上げて提供していた。これによりコストを抑えることはできたものの、端末のキッティングをはじめとした作業により運用管理負荷が増加。また、故障時の原因究明が速やかに行えないなどの問題も抱えていたという。

      加えて、ユーザーが外出や出張に出かける際にも、必要なデータを現場で確認することができず、コミュニケーションが煩雑になりがちだったという。テレワークの需要も急速に高まる中、こうした環境のままではさらなる生産性向上を目指すことも難しくなってしまう。

      このような課題を解消すべく、同カンパニーでは設計・開発者向けクライアントの抜本的な刷新を決断。従来のタワー型PCに代えて、高性能モバイルワークステーションへの移行を実施した。これにより、運用管理負担を軽減できただけでなく、設計・開発者の業務効率を大幅にアップさせることが可能になった。その具体的な内容を見ていこう。

    • モバイルワークステーションの活用でエンジニアの働き方はどこまで変わるのか

      川崎重工業株式会社
      船舶海洋カンパニー プロジェクト本部
      情報システム部
      坂出システム課 主事
      山越 幹夫氏

      「自前で調達してきたタワーPCのケースを開けて、1台ずつグラフィックボードやSSDを組み込んでいくわけです。その台数も、坂出(香川)工場だけで約300台。しかも、メーカー純正品のような手厚いサポートがあるわけではありませんから、もし故障したら自分たちで苦労して直さないといけません。今思えば、相当な運用負荷がかかっていました」。かつての状況をこう振り返るのは、同カンパニー プロジェクト本部の山越 幹夫氏だ。

      そもそも、同カンパニーがこうした運用を行っていたのは、コスト削減が主な目的であった。設計・開発業務では、重たい船舶の3DCADを快適に動作させられる環境が必要だ。しかし、ハイスペックな市販品をそのまま購入したのでは、費用がどんどんかさんでしまう。自前でPCを組み上げることで、こうしたコストを少しでも抑えようとしていたのだ。

    • 川崎重工業株式会社
      船舶海洋カンパニー プロジェクト本部
      情報システム部 坂出システム課
      石原 雅教氏

      とはいえ、その運用がそろそろ限界に達しつつあったことも事実だった。「業務用途に応じてPCのイメージファイルを作成するのですが、その数も年々増える一方。ハードウエアの仕様が変われば、イメージも作り直しですので、その管理にも相当な手間がかかっていました」と同カンパニープロジェクト本部の石原 雅教氏は話す。

      その一方で、ユーザー側の業務にも様々な課題が生じていたという。

      「タワー型PCを持って出歩くわけにもいきませんから、ノートPCとの2台持ちユーザーも多かった。ただし、これを使うにしても、出先で使うソフトウエアやデータをノートPCに入れたりと、煩雑な準備作業が必要になります。せっかくタワー型PCにCADの実データがあるのに、パワー不足のノートPC向けにわざわざビューア用に落として持っていくなど、非効率な面もありました」と同カンパニー 技術本部の村井 智木氏は話す。

    • 川崎重工業株式会社
      船舶海洋カンパニー
      技術本部 造船設計部 業務改革担当
      兼 設計管理課長
      兼 坂出造船工場 プロセスイノベーション部 基幹職
      村井 智木氏

      こうした状況を変えるきっかけとなったのが、デル・テクノロジーズ製品だったという。「ちょうど前年にOA用パソコンをデル・テクノロジーズで刷新したのですが、性能、品質、サポートなどあらゆる面で非常に満足度が高かった。そこで、設計・開発用パソコンのリプレースについても相談をしたところ、Dell Precisionワークステーションの展示会を社内で開いてくれたのです」と山越氏は話す。

      ここでは、タワー型、ラック型、モバイル型など、あらゆるタイプのワークステーションに加えて、USB Type-C接続の27インチモニターも展示。IT部門だけでなく、実際に製品を利用する設計部門のユーザーも参加して、綿密なチェックを行った。その結果、Dell Precisionモバイルワークステーションを選択したのだという。

    • 優れた性能と持ち歩ける軽さが働き方を変える原動力に

      川崎重工業株式会社
      船舶海洋カンパニー
      技術本部 造船設計部
      設計管理課
      兼 坂出造船工場 プロセスイノベーション部
      伊奈 利晃氏

      なぜ、同カンパニーはモバイルワークステーションを選択したのか。

      「これまではデスクで仕事をするのが当たり前だったわけですが、Dell Precisionモバイルワークステーションなら、いつでも、どこにでも持ち運んで仕事ができます。これなら働き方そのものを根本的に変えられると強く感じました」と同カンパニー 技術本部の伊奈 利晃氏は、その理由を説明する。

      これまでのモバイルワークステーションには、重量やサイズの面でとても持ち運びには堪えないというイメージもあった。しかし、今回採用された「Dell Precision 5540モバイルワークステーション」は、最小構成で1.78kg。村井氏は「製品を見学したユーザーからも、『これだけ軽ければ出張にも気軽に持っていける』と好評でした」と話す。

      もっとも、実際に業務に適用する上では、3DCADをはじめとする各種のアプリケーションを軽快に動作させる必要がある。そこで、同カンパニーでは、あらかじめ検証機と実データを用いた性能チェックを実施。「Intel Core i9 プロセッサー」やNVMe SSD、プロフェッショナル向けグラフィックスカード「NVIDIA Quadro T2000」というスペックであれば、同カンパニーの設計・開発業務にも十分対応できることを確認したのだという。

       

      Dell Precision 5540モバイルワークステーション

      「端末の運用管理を担当する立場としては、しっかりとしたセキュリティロックやUSB Type-C端子、顔認証対応のIRカメラなどを備えている点も重要なポイントでした」と山越氏は話す。

      特にUSB Type-Cについては、同端子対応のモニターと組み合わせて活用できる点が大きな魅力だったという。

      「以前は設計・開発者向けに19インチのモニターを2台提供していましたが、モニターケーブルや電源ケーブルの取り回しが煩雑な上に、管理工数も2台分必要になります。そこで今回から、USB Type-C接続の27インチモニターを新たに導入。大画面で快適に作業できるようになっただけでなく、デスク回りも格段にスッキリさせることができました。これで外出するときはモバイルワークステーションで、社内で設計作業するときはモバイルワークステーションをUSB Type-Cモニターに接続して、大画面で作業を行うといったワークスタイルが確立できました」と伊奈氏は話す。

      ただし、モバイルワークステーションはノートPCに比べればスペックアップとなり、相対的に費用もあがってしまう。しかし費用についても、無事予算内に収めることができたという。その理由について山越氏は「Dell Precision 5540モバイルワークステーションなら、設計・開発業務もそのほかの業務もすべて1台でカバーできます。持ち出し用のノートPCはもう不要ですから、その分のコストを削減することで問題なく導入が行えました」と説明する。

    • 設計・開発者の業務効率化に大きく貢献

      Dell Precision 5540モバイルワークステーションを導入したことで、同カンパニーの業務にも大きな変化が生まれている。「以前は電話でのやりとりも多かったので、他部門から図面のここがおかしいと言われても、どこが問題なのかすぐに分かりませんでした。しかし、今後は、必要ならいつでもどこでも実データを開いて確認できますから、業務効率が飛躍的に上がるでしょうね」と村井氏は期待を寄せる。

      テレビ会議を行う場合も、以前はカメラと大画面モニターが設置された会議室で行うのが一般的であった。しかし現在では、自席や出張先からも気軽に参加することができる。設計部門内で打ち合わせを行う際なども、お互いにDell Precision 5540モバイルワークステーションを持ち寄って対話することで、業務がスムーズに運ぶようになったという。

       

      オフィス内で業務を行う際には、USB Type-C接続の27インチモニターと組み合わせて活用。大画面で快適に作業できるのはもちろん、デスク回りのケーブル類もスッキリさせることができた
    • 川崎重工業株式会社
      船舶海洋カンパニー
      プロジェクト本部 情報システム部
      坂出システム課長
      浅田 典彦氏

      さらに、もう1つ見逃せないのが、新型コロナウイルスへの対応にも役立った点だ。「神戸工場では、リモートワークを余儀なくされた社員も多かったのですが、クライアントをいち早くDell Precision 5540モバイルワークステーションに入れ替えていた社員については、ほとんど業務に支障が出なかったと聞いています。ちなみに、私自身も1カ月ほど自宅で勤務しましたが、業務で困るようなことはありませんでしたね」と石原氏は話す。

      以前の大きな課題の1つだった端末の運用管理作業についても、大幅な効率化が実現した。「Dell Precision 5540モバイルワークステーションは非常にパフォーマンスが高いので、キッティング時のインストール作業などを短時間で終えられます。おかげで、前回のクライアント更改時と比較して、社内への展開期間を約24カ月短縮。しかも半分以下の人員で実施することができました。もし故障などが発生した場合も、『Dell ProSupport Plus』によるオンサイト保守が受けられますので安心です」と山越氏は満足げに話す。

    • 川崎重工業株式会社
      船舶海洋カンパニー プロジェクト本部
      情報システム部長
      兼 坂出造船工場 プロセスイノベーション部 基幹職
      松野 二郎氏

      これらのメリットを高く評価した同カンパニーでは、今後もDell Precision 5540ワークステーションを積極的に活用していく考えだ。「ほかのカンパニーとも歩調を合わせる必要はありますが、せっかくこうした環境が実現できたわけですから、リモートワーク/テレワークのさらなる推進に役立てていければ」と同カンパニー プロジェクト本部の浅田 典彦氏は話す。

      また、同カンパニー プロジェクト本部の松野 二郎氏も「リモートワークを含む働き方改革の取り組み自体は、当カンパニーでも以前から進めていました。しかし、今回のコロナ禍のような事態を想定した取り組みではなかったので、苦戦を強いられました。実際に体験したことで見えてきた課題もありますので、さらなる改善を進めていきたいですね」と今後の展望を述べた。

    • 日経BP社の許可により、2020年9月15日~ 2020年12月14日掲載 の 日経 xTECH Active Special を再構成したものです。