• 装飾

    現場データ分析で成果を出す企業になるには

    店舗で、自宅で、工場で、どこでもデータ分析できる仕組みづくりのポイント

    • サービス接客、ものづくりなど現場で進みつつあるデータ分析の潮流

      膨大なデータの分析によって、ビジネス上の成果を生み出していく。このような取り組みが近年、日本企業でも広がってきた。

      例えば自動車メーカーのマツダはその一例だ。同社では「モノ造り革新」の一環として、データを活用した「バーチャルシミュレーション」に取り組むことで、金型に起因する不具合を75%削減した。

      また、流通業ではコープこうべが、日持ちしない食品を自動発注するシステムによって、ロスや欠品を大幅に削減。ここでは過去8週間分という膨大なPOSデータが活用されている。さらに外食産業でも、ICチップを利用したデータ収集・分析によって、1分後と15分後に必要な握りとネタを予測し、廃棄量を1/4に削減した、あきんどスシローの事例がある。

      これらの企業に共通するのは、現場、つまりエッジでデータ分析を行っているという点だ。サービス接客の現場、ものづくりの現場など様々な場面で、データを分析し成果を上げているわけだ。

      これらのようなビジネスに直結したデータ分析は、企業の経営効率を高め、利益増大に大きな貢献を果たす。その一方で最近では、新たな課題にも直面している。データ分析を担当する社員の働き方改革を、どのように実現していくかという課題だ。

      テレワークを軸とした働き方改革は、既に数多くの企業が推進している。その動きは、今回の感染症への対応で在宅勤務が広がるなど、一気に加速した感がある。しかしこのような状況下でも、テレワークがなかなか進まなかった専門職種もある。データサイエンティストやそれに準ずる仕事をする人々も、その中に含まれているのだ。

      その理由は、膨大なデータを高速に処理するには、高性能なワークステーションの利用が求められ、これまでデータ分析の現場ではデスクトップ型ワークステーションの利用が主流だったからだ。これを自宅や現場に持ち運んで使うことは容易ではない。とはいえ、現場にあるPCやノートパソコンでは、高速なデータ分析を行うのは困難だ。

      しかしこのような問題も解決可能になりつつある。その理由はデータサイエンス向けのモバイルワークステーションが登場しているからだ。では、具体的にどのような製品が利用可能になっているのか。そして海外におけるデータサイエンティストの働き方は、どのようになっているのか。次ページ以降ではその具体的な仕組みやメリットについて紹介したい。

    • 現場や自宅で膨大なデータを分析する。その仕組みやメリットとは

      エヌビディア合同会社
      エンタープライズマーケティング
      シニアマネージャー
      田中 秀明氏

      クラウド上で分析対象のデータを共有し、これを自宅に設置したワークステーションで分析する。あるいは現場で吸い上げたデータをデータサイエンティストがその場で解析を行う――こうした働き方は、既に北米では一般的なものになっている。このように語るのは、NVIDIAの田中 秀明氏だ。

      「データサイエンティストのテレワークは、海外企業では既に定着しているところも少なくありません。そのため今回のCOVID-19への対応でも、データサイエンティストの働き方はそれほど変わりませんでした」

      このような働き方が可能になった背景としては、ワークステーションのデータ分析能力が飛躍的に向上したことが挙げられる。NVIDIAはその重要な立役者だ。NVIDIAが提供するGPUがデータサイエンスにも対応してきたことで、従来であればデータセンターに設置された巨大な並列処理コンピューター(HPCクラスタ)が必要だったデータ分析が、手元のワークステーションでも行えるようになったのである。

      「海外企業のデータサイエンティストの働き方は、データサイエンスに対応したGPUによって大きく変化しました。以前は分析対象となるデータを用意し、それを分析するジョブをHPCクラスタに投入した後、結果が出るまで長時間待つ必要があり、その可視化のための処理時間も必要でした。そのためデータサイエンティストの業務には待ち時間が多く、決して効率的な働き方とはいえなかったのです。しかしハイエンドGPUを搭載したワークステーションが手元にあれば、このような待ち時間を最小化できます。CPUによるデータ処理に比べ、GPUによるデータ処理は数倍~数十倍の速度に達するからです」(田中氏)

       

      NVIDIA GPUによって大きく変化したデータサイエンティストの働き方

      高速なデータ処理が可能なワークステーションを手元で利用することで、待ち時間が大幅に短縮し、業務効率が向上した。これによってトライアル&エラーも行いやすくなり、データ分析の質も高めやすくなる

       

      このようなワークステーションを小型化したモバイルワークステーションを活用することで、データサイエンティストの働き方はさらに大きな自由度を獲得できるようになった。前述のように、自宅や現場にワークステーションを持っていき、場所の制約を受けずに業務を遂行できるようになったからだ。既に海外では、ワークステーション販売台数の半分近くがモバイル型となっており、北米では50%を超えているという。

      これに対して日本では、ワークステーション出荷台数のうちモバイル型が占める割合は、まだ16%程度にすぎない。しかし「海外に比べて出遅れたからこそ、最新のモバイルワークステーションが今後一気に普及する可能性も高い」と田中氏は指摘する。

    • NVIDIA Quadroを搭載した薄型・軽量ワークステーション

      それでは現時点において、データサイエンス向けワークステーションとして、どのような製品が利用できるのか。その代表例として挙げられるのが、Dell Precisionデータサイエンス ワークステーションだ。

      「Dell TechnologiesはNVIDIAにとって極めて重要なパートナーであり、緊密に連携しながらデータサイエンス向けワークステーションの開発を行っています。NVIDIA Quadro RTXシリーズのようなデータサイエンス向けGPUの開発でも、Dell Technologiesは構想・企画段階から参加してもらっています」と田中氏は述べる。

      Dell Technologiesが提供するデータサイエンス向けワークステーションは、現時点では4モデル存在する。タワー型のDell Precision 7920 TowerとDell Precision 5820 Tower、モバイル型のDell Precision 7740とDell Precision 7540だ。ここで特に注目したいのが、モバイル型の2モデルである。

       

      デルが提供するデータサイエンス向けのDell Precisionシリーズ

      現在、タワー型2モデルとモバイル型2モデルをラインアップ。2020年6月に出荷が始まった最新2モデルでも、データサイエンス向けの検証が進められている

       

      デル・テクノロジーズ株式会社
      クライアント・ソリューションズ統括本部
      クライアント製品マーケティング本部
      フィールドマーケティングマネージャー
      湊 真吾氏

      これらはいずれもNVIDIA Quadro RTX 5000を搭載。これはモバイル向けのGPUであり、GPUアーキテクチャとしてはディープラーニング用のTensorコアを実装したTuringを採用、Tensorコア数は382、CUDAコア数は3072となっている。また、ディープラーニングや機械学習などのHPC向けに提供されている、GPU最適化ソフトウェアハブ「NGC」にも対応しており、HPCをシンプルな形で利用可能。これを搭載した2モデルは、データサイエンスで利用されるソフトウエアや手順書が提供されており、納品された時点からすぐに、データサイエンス向けワークステーションとして活用可能だ。

      「これらに加え、2020年6月に出荷を開始した最新モデルでも、データサイエンスでの利用について検証を進めています」と語るのは、デル・テクノロジーズの湊 真吾氏。その最新モデルとは、Dell Precision 7750とDell Precision 7550だ。これらもNVIDIA Quadro RTX 5000を搭載した、モバイル型ワークステーションの上位モデル。前者は17インチ、後者は15インチのディスプレーを装備している。注目したいのはその薄さと軽さだ。15インチモデルのDell Precision 7550は、前面の厚さが25mm、重量は2.5kgしかない。「検証中とはいえ、ご自身でソフトウエア環境を整備できるのであれば、今すぐにでもデータサイエンスワークステーションとして活用できます」(湊氏)。

    • モバイル化によって高まるデータ分析の自由度

      日本でもこのようなモバイルワークステーションを活用すれば、データ分析担当者の働き方は大きく変化していくはずだ。タワー型やデスクトップ型とは異なり、2.5kg程度のモバイルワークステーションであれば、気軽に自宅に持ち帰って使うことができるため、テレワーク化を進めやすくなる。

      しかし期待できる効果はこれだけではない。ほかにも様々な使い方が考えられる。

      その1つがプレゼンテーションでの活用だ。GPU搭載のワークステーションであれば、分析結果の可視化もすぐに行える。このようなメリットを生かし、社内ミーティングの場や訪問先にワークステーションを持ち込み、その場でビジュアライズしてみせるといった使い方が考えられる。

      「データサイエンティスト自身がこのような場でプレゼンテーションを行う事例は海外でもまだ少ないのですが、将来はこのような使い方も広がっていくのではないでしょうか」と田中氏は言う。

      また、データ発生源の近くでデータ分析を行う、といったことも容易になるはずだ。例えば工場内のIoTデバイスから収集されたデータを、工場内に持ち込んだモバイルワークステーションで分析する、といったことが考えられる。最近では土木工事現場にドローンを飛ばし、地形の点群データを生成するという取り組みも広がっているが、ここで生成された膨大な点群データをその場で処理する、といったことも可能になるだろう。

      「日本ではこれから働き方を大きく変えていくことが求められるため、モバイルワークステーションが果たす役割も大きなものになるはずです。なぜならデータ分析に対応できる優秀な人材を確保する上でも、このような環境整備は欠かせないものになるからです」と湊氏。こうした観点からDell Technologiesではデータサイエンスワークステーションが業務にどのような成果をもたらすのか、評価・検証を行うためのプログラムも用意しているという。

      まずはこうしたプログラムを活用しながら、自社にあった仕組みを構築することがデータ利活用を行っていくための第一歩だといえるだろう。

    • 日経BP社の許可により、2020年7月30日~ 2020年11月30日掲載 の 日経 xTECH Active Special を再構成したものです。