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    • 日経BP社の許可により、2019年11月20日~ 2019年12月24日掲載 の 日経 xTECH Special を再構成したものです。

     
    • コニカミノルタが「デジタルカンパニー」を目指す理由とは

       

      黒田 コニカミノルタ様では、ビジネス社会や人間社会の進化のために新たな価値を創出する「課題提起型デジタルカンパニー」への変革を目指されています。その狙いはどこにあるのでしょうか。

      藤井 そもそも当社はメーカーですので、製品を製造して販売することが生業です。しかし、市場や社会環境が大きく変化する中、ただモノを売るだけではお客様の期待に応えられなくなっています。そこで、実績あるハードウエアに加え、ソフトウエアやデータ、ネットワーク、サービスなどの要素も組み合わせ、お客様企業の経営課題解決やデジタルトランスフォーメーションをしっかりとご支援できる企業を目指したいと考えました。特にデジタル技術には、これまで苦労していた様々な事柄をより早く、リアルタイムに処理できるという利点があります。このメリットを最大限に生かすことで、ビジネス社会や人間社会の進化にも貢献できると考えています。

      黒田 デジタル技術を通じて、ビジネス社会や人間社会の進化に貢献する──。これは当社としても非常に共感できます。というのもDell Technologiesでも、「人類の進化」というビジョンを掲げているからです。

      PCメーカーとして創業したDellは、EMCをはじめとする先進テクノロジー企業と合併し、Dell Technologiesとして新たなスタートを切りました。そこで掲げたのがまさに「人類の進化を牽引するテクノロジーの創出」というビジョンです。現在では、あらゆる企業や組織がデジタルカンパニーとなり、データに基づいたビジネスを展開するようになりつつあります。しかも、5GやAI/IoT、ブロックチェーンなどの新技術も次々と登場し、今までにないビジネスやサービスを容易に創出できるようになっています。もちろん、こうした取り組みを進めていく上では、高い先進性や効率性を備えたインフラが欠かせません。これを実現するためのプラットフォーム製品を提供していくことが、われわれに課せられた重要な使命だと考えているのです。

    • 一人ひとりの個人にしっかりと目を向けることが重要

       

      黒田 「課題提起型デジタルカンパニー」の実現に向けては、「B to B」から「B to B to P(Professionals) for P(Person)」への転換も意識されていますね。

      藤井 「B to B」という視点だと、どうしてもビジネスの相手を「企業」という大きなくくりで捉えがちです。しかし、本当に生産性を高めていくためには、様々な職場で働く一人ひとりのプロフェッショナル(Professionals)をエンパワーすることが肝心です。例えば、われわれが担当するヘルスケア事業でいえば、医師の方々がより早く、的確に治療や診断が行えるソリューションを目指さなくてはなりません。そしてこのことは、もう1つの「P」である患者様(Person)にとっての利益にもつながってきます。

      つまり、2つのPにしっかりと目を向けないと、真の課題解決には至らないということなのです。Eコマースの分野では、顧客の購買履歴などから別の商品を推奨する仕組みが活用されていますが、こうしたパーソナライゼーションが簡単に行えるのがデジタルの良さ。ヘルスケアにおいても、個々の患者様の疾病履歴や遺伝子情報などを分析することで、その人に合った医療を提供できます。

      黒田 一人ひとりの個人に目を向けるべきというお考えには全く同感ですね。当社でもコンシューマー向け/企業向けの両方の製品を取り扱っていますが、創業者であるマイケル・デルは「当社にとっては売り上げ2兆ドルの大企業も、2階建ての農家もどちらも大事なお客様」だと述べています。もちろん、デジタル化に向けての取り組み方はそれぞれで異なりますが、そのための方法論や道具立てもDell Technologiesとして強化を図っています。

    • 「個別化」と「早期化」を軸にヘルスケア事業を展開

       

      黒田 コニカミノルタ様のヘルスケア事業では、どのようなビジネス戦略を描いておられるのですか。

      藤井 現在ヘルスケア事業部門では、大きく分けて「個別化」と「早期化」の2つの領域にフォーカスしています。従来型の医療では、疾病の領域や対象となる臓器などによって、治療方法の大枠が決まってしまうのが一般的でした。しかし、個々の患者様の特徴を分子・遺伝子レベルで捉えられれば、その人にとってより最適な治療や投薬が行えます。また、病気の予兆をできるだけ早く、まだ本格的な罹患に至らない未病の段階で検知できれば、重篤化するような事態を避けられますし費用も安く済みます。こうした予防、早期化の取り組みを、それぞれの個人に合った形で進めていくことが重要と考えています。

      特に日本では、国民医療費の増大が社会的な課題となっていますし、患者様の経済的・身体的負担も無視できません。一方、製薬会社においても、新薬開発の成功率をいかに上げるかが重要なテーマになっています。個別化/早期化医療を推進することで、このような社会課題の解決にも貢献できるものと確信しています。

      黒田 そうした取り組みを進める中で、コニカミノルタ様ならではの強みはどこにあるのでしょうか。

      藤井 ご承知の通り、当社はフィルムやカメラから発展してきた企業ですので、社内には先進的な材料技術や光学技術、画像処理技術が数多く蓄積されています。これらのコア技術は、個別化/早期化医療を進めていく上でも非常に強力な武器となります。例えば、当社が開発した「HSTT(タンパク質高感度定量検出技術)」では、独自技術によるナノ粒子を結合したタンパク質をAIで画像分析することで、がん細胞と免疫細胞の位置を正確に認識したり、タンパク質の発現量を定量的に測定したりできます。こうしたことが実現できるのも、長年にわたり蓄積してきたフィルム技術や画像処理技術があればこそです。

    • とはいえ、自前主義だけにこだわっていたのでは、ビジネススピードを速めていくことは難しい。そこで、遺伝子検査のリーディング・カンパニーである米Ambry Genetics社と最先端のAI/画像処理技術で創薬・治験の支援を行っている米Invicro社の買収も行いました。これにより、身体を構成する組織やタンパク質、遺伝子を、生体検査、血液、画像など、様々な方法で見られるようになります(図)。

       

    • 病院や研究機関と連携し、新たな診断/治療方法を開発

      藤井 Dell Technologiesでも、医療/ヘルスケア分野に対する支援を積極的に行っていますね。

      黒田 もともと旧Dell、EMC両社のPCやストレージ製品が6割を超える米国医療機関で採用されていたこともあり、病院や大学、研究機関とのつながりが非常に深いのです。しかも医療は、テクノロジーの力を存分に発揮できる分野でもありますので、様々な取り組みを各機関と共同で行っています。その1つがVR/ARです。例えば脳外科手術する前に、MRIで撮影した画像を、VRのヘッドセット内で表示し、細部がどうなっているか3Dで確認作業を行います。海外ではARを活用して、手術で必要な情報をメガネ上に表示する取り組みも進めています。これにより、より正確な治療が行えるわけです。また、AIの画像認識技術を使ったがんの診断支援も重要な研究分野の1つになっています。

       

      藤井 デジタル技術の中でも、特にAIは医療分野との相性がよいテクノロジー。大量なデータを分析し、わずかな差異や異常を発見できるAIのメリットも最大限に発揮できます。また、医療スタッフは慢性的な人手不足ですから、AIで代替できることがあれば、現場は助かるでしょう。

      黒田 機械学習や深層学習を活用することで正確性も向上しますし、スピードが速まる点も大きなメリットです。特に進行の早い病気などでは大きな力を発揮します。例えばDell Technologiesでは、医療機関や組織と共創して小児がん診断・治療の向上に向けた取り組みを展開し、2011年には数週間かかっていた患者様のゲノム解析を、約8時間にまで短縮する取り組みを成功することができました。このように最新のデジタル技術を活用することは、多くの患者様の力になれると考えています。

    • X線画像診断の新たな地平を切り拓く「KINOSIS」

      黒田 コニカミノルタ様では、一般X線撮影装置を用いて動画を撮影できるデジタルX線動画撮影システムを開発されました。その背景について伺えますか。

      藤井 日本人の死亡原因の1位はがんであり、その部位は男女とも気管支および肺が1位です。胸部の異常を早期に発見することが、こうした状況を変えることにつながってきます。そこで着目したのが動画でした。肺は呼吸するための器官ですから、常に大きく動いて換気を行っています。また、血管に酸素を取り込む役割も担っていますので、血流の動きも非常に激しい。静止画だけではこのような変化を十分につかめませんから、動画による観察が行えるようにしたいと考えたのです。

      横隔膜の動きや血流の状態も動画で確認することができるため、適切な治療方針を早く立てることができますし、患者様への負担も最小限に抑えられます。既に国内外の様々な医療機関でご採用いただいており、早期発見や最適な治療の実現に大きな成果を上げています。

       

       

      黒田 システムの中核を担うX線動画解析ワークステーション「KINOSIS(キノシス)」には、DellのOEM顧客向け長期供給製品であるDell Precision 5820 XL Towerを採用していただきました。

      藤井 いくら効果的な診断が行えても、そのために高額な専用ハードウエアが必要ということでは、医療機関としてもハードルが高い。そこでKINOSISの開発にあたっては、CT/MRIなどと比較しても圧倒的に設置台数の多い一般X線撮影装置と組み合わせて利用できるものにしたいと考えました。その結果、既存の設備にワークステーションとデジタルX線撮影装置をアドオンするだけで、必要な環境を整えられるようになっています。

      黒田 当社は世界各地にある自社工場で製品の受注生産を行っており、お客様側で利用されるOSやアプリケーションをあらかじめ組み込んだ状態で出荷するサービスもご用意しています。今回もこのサービスをご活用いただき、KINOSISの画像解析に必要な環境をセットアップした状態でOEM供給を行っています。KINOSISに搭載されているWindows Embedded OSは、産業用デバイスへの組み込みシステム向けのOSで、Dellは自社工場でWindows Embedded OSをインストールできる唯一のPCベンダー。加えて、安心して利用していただけるよう、OEM顧客専用のテクニカルサポート電話受付窓口を世界各地に設けており、グローバルで保守・運用もご支援しています。

      藤井 医療分野のサービスは、人の生命に深くかかわるため、機器の信頼性や安定性は大前提になります。また当社自身も、グローバルで事業を展開しているので、そうした体制が整備できるパートナー企業と組むことは重要なポイントとなります。年に数回、Dell Technologiesの専任担当者とコンタクトする機会がありますが、非常に良い体制だと感じています。

    • より最適な医療の実現に向けデジタル技術の活用を加速

      黒田 ヘルスケア分野においても、デジタル技術の重要性はますます高まっていくと思われます。今後はどのような方向を目指されますか。

      藤井 いろいろな方向性が考えられますが、1つは早期診断/早期治療への取り組みにさらに力を入れていくという点です。遺伝子解析などを通して、まだ未病の段階でも自らが抱えているリスクをしっかりと認識できるようにしていきたい。また、血液検査によってがんの転移などを調べる「リキッドバイオプシー」などの技術開発も推進し、患者様の負担軽減やQOL向上に寄与していきたい。これからのヘルスケアには、ライフサイエンスとデータサイエンスの融合が重要なポイントになってきます。当社もそうした企業を目指していきたいですね。

      黒田 インフラ領域を担うわれわれとしても、テクノロジーで貢献できる分野がいろいろあると感じています。例えば、病院をIoT化して看護師の方々の業務負担軽減を図るのはその1つです。また、究極の個人情報を厳格に管理しながらも、クラウドやオンプレミスをまたいでデータを活用していくことも必要になってくるでしょう。こうしたことを実現する上では、セキュリティやAI専用チップなど様々な要素技術が必要です。当社でもコニカミノルタ様のような医療現場に寄り添う企業と連携し、要素技術を製品レベルに引き上げる役割を果たし、よりよいヘルスケア・ソリューションの実現を後押ししていきたいと思います。

  • Dell Technologiesのアドバイザーがサポートします。