• 装飾

    Windows環境が劇的に進化する、Azure Stack HCIの衝撃

    • Windows ServerだけでHCIが実現できる製品が登場

      クラウドサービスの活用は、もはやIT戦略の常識と言っても過言ではない。業務アプリケーションにSaaSを活用したり、開発やバックアップ基盤にPaaSやIaaSを活用したりするケースが増えている。

      しかし、すべてのオンプレミス環境をクラウド化するのは難しい。企業内には外部に出せない重要データも数多くあるからだ。データベースのように大量のトランザクションを処理するシステムは、かえってコスト負担が高まることもある。

      こうした背景から、用途や目的に応じてクラウドとオンプレミスを使い分ける「ハイブリッド化」が主流になりつつある。しかし、そうなるとオンプレミスとクラウドという異なるインフラの管理が必要になる。管理の負担は必然的に高くなる。

      このジレンマを解消するソリューションとして注目されているのが「HCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャ)」だ。HCIは、従来の外付けストレージを使わないソフトウエア定義ストレージ(SDS)ベースの仮想化基盤。インフラの構築と管理が容易になり、オンプレミスとクラウドのシームレスな連携も可能になる。

      しかし、Windows Serverを利用するユーザーにとって、HCIはハードルの高い存在だった。従来のHCIをHyper-V環境で使おうとすると制約が多く、統合インフラとしてのメリットを打ち出すのが難しいからだ。追加のライセンスフィーがかかり、コストメリットも半減する。

      そうした中、この課題を解消する画期的なソリューションが登場した。それが「Microsoft Azure Stack HCI(以下、Azure Stack HCI)」である。検証済みのハードウエアで構成するWindows Server 2019ベースのHCIだ。Windows Server 2019の標準機能だけでHCIを実現できるため、従来のHCIと比べてコストメリットが非常に高い。マイクロソフトのクラウドサービス「Azure」との親和性も高く、オンプレミス/クラウド間の仮想サーバーの移行やワークロードの実行もシームレスに行える。

      日経BP総研
      イノベーションICTラボ
      上席研究員
      ビジネスAIセンター長
      森側 真一

      このAzure Stack HCIは、Windows Serverユーザーにどのようなインパクトをもたらすのか。選択する際は何を重視すべきか。日経BP総研の森側 真一が、Azure Stack HCIの主力ベンダーのキーパーソン2人に話を聞いた。

    • なぜ、Azure Stack HCIは圧倒的に低コストなのに信頼性も高いのか

      森側:Azure Stack HCIの注目が高まっています。HCI製品は以前からありますが、従来製品との一番の違いは何ですか。

      Dell Technologies
      インフラストラクチャ・ソリューションズ事業統括 ソリューション本部
      ビジネス開発マネージャ
      津村 賢哉氏

      津村氏:Windows Server 2019の標準機能だけでHCIを実現できることです。必要なソフトウエアのライセンスは、すべてOSライセンスに含まれています。従来のHCIでHyper-V環境を動かそうとすると、HCIライセンスや仮想化技術ライセンスなどを追加購入しなければなりませんでしたが、Azure Stack HCIはその必要はありません。従来のHCIに比べて圧倒的に低コストです。

      しかも、マイクロソフト認定済みのハードウエアで事前検証しているため、サーバー、ストレージ、ネットワークを統合したインフラ構築の手間がかからず、確実な動作と高いパフォーマンスを保証します。フェールオーバー クラスタリングを標準で実装しており、デバイスの障害やノードがダウンしても、すべてのデータにアクセスが可能。可用性も非常に高いです。

      南部氏:マイクロソフトのクラウドサービス「Azure」との親和性も高い点も大きなポイントです。Hyper-V環境のワークロードを、オンプレミスでもクラウドでもシームレスに実行できる上、Hyper-V同士のゲストOSの移動も簡単に行えます。

    • これまでに培ったWindowsやHyper-Vのスキルを継承できるため、戸惑うことなく新しいインフラに移行できるはずです。無償のWindowsサーバー管理ツール「Windows Admin Center」を使えば、オンプレミスとAzureを同じコンソールで統合管理し、一体的な運用・連携が可能です。運用の効率化という点でも大きなメリットがあります。

       

      [画像のクリックで拡大表示]
      Azure Stack HCIは、Microsoftのクラウドサービス「Azure」とシームレスに連携する一方、Hyper-V環境のレガシーアプリケーションやワークロードの移行および統合的な運用も容易に行えるオンプレミス環境のインフラストラクチャ
    • 森側:Azure Stack HCIの用途としては、どのようなニーズが高いのでしょうか。

      津村氏:クラウドファーストが叫ばれたころは、クラウドかオンプレミスかという二者択一の選択が迫られていましたが、今はステージが変わってきたように思います。システムやワークロードによってはオンプレミスのほうが適しているものもあるし、クラウドが適しているものもある。2つをうまく使い分ける企業が増えています。

      しかし、オンプレミスのインフラの構築や運用が足かせになると、クラウドのスピード感に対応できない。オンプレミスでもクラウド並みの俊敏性・柔軟性を実現し、運用管理の手間も削減したい。そのためのソリューションとしてのニーズが高いですね。

      南部氏:Azureとの親和性の高さを生かして、オンプレミスとクラウドを使い分けるために利用するお客様、オンプレミスで運用するSQLサーバーの統合を目的に利用するお客様も多い。津村が申し上げた俊敏性・柔軟性の確保に加え、この2つを含めた3つの用途がメインですね。

      森側:市場規模も拡大しているのでしょうか。

      津村氏:HCI市場全体が伸びており、その中でHyper-Vの市場も拡大しています。国内の伸び率も高く、年間2ケタ以上の成長を続けています。

    • 圧倒的な高性能と充実のサポートがデルの強み

      森側:複数のベンダーがAzure Stack HCIを提供しています。その中でデル製品の強みは何ですか。

      Dell Technologies
      インフラストラクチャ ソリューションズ事業本部
      エンタープライズ テクノロジスト
      南部 憲夫氏

      津村氏:デルは以前からWindows Server 2016をベースにした独自のHCI製品を他社に先駆けて提供してきました。今回のAzure Stack HCIも、ソフトウエア・デファインド・ストレージ 「Storage Spaces Direct(S2D)」をはじめ、これまで培った機能や構成の仕方を受け継いでいます。実績と信頼は大きなアドバンテージです。

      南部氏:Azure Stack HCIの性能と機能を最大限に引き出す専用のハードウエアを搭載し、最新テクノロジーもふんだんに取り入れています。低レイテンシーのストレージインタフェース「NVMe(Non-Volatile Memory Express)」を実装し、クラスター間通信には高速なメモリアクセスを実現する「RDMA(Remote Direct Memory Access)」を採用しています。RDMAはコンピュータをまたいでメモリをダイレクトに転送する技術。高パフォーマンスを実現し、CPUのリソース消費も抑制できます。マイクロソフトが公開しているストレージのベンチマークでは、他社のHCI製品に類をみない約1380万IOPSという驚異的なI/O性能を記録しました(※)。

    • ※ 参照先:https://techcommunity.microsoft.com/t5/Storage-at-Microsoft/The-new-HCI-industry-record-13-7-million-IOPS-with-Windows/ba-p/428314

       

      [画像のクリックで拡大表示]
      Dell EMCのAzure Stack HCIは、最新のテクノロジーを採用し、検証済みの最適な構成で導入や保守サービスのソリューションを含めた形で提供。シンプルなラインアップで様々なワークロードをサポートするのが特徴
    • 森側:統合的なインフラ環境を容易に構築できるとはいえ、利用環境やワークロードは企業によって様々です。製品のポテンシャルを本当に引き出せるのか不安に感じるユーザーも少なくないと思います。

      南部氏:そうしたニーズに対応するため、デルではサポートサービスの提供に力を入れています。ハードウエア構成に応じた各種設定を専門技術者がスピーディーに行う導入支援サービスはその1つ。各ノードでのRDMAやネットワーク設定の実施に加えて、S2Dとストレージプールの構成、Hyper-Vやフェールオーバー クラスターの作成などを行い、オーダーを受けてからおよそ2週間で、すぐに使える状態で提供します。お客様はインフラの構築や設定の手間を一切考える必要がない。その上で動く仮想化環境やアプリケーションの構成・展開に注力できるようになります。

      導入後の保守サポートも充実しています。導入ガイドやオペレーションガイド、先進の事例情報などを専用サイトで公開し、お客様はこれらを自由に利用できます。

      森側:性能要件を満たすためのサポート情報をきちんと明文化しているわけですね。インフラの構築・導入の手間を減らし、いかに速くその価値を享受するか。そこにフォーカスしている点が際立っていますね。

      津村氏:タグナンバーでお客様環境の状況を把握し、発生した問題を即座に通知するサービスも展開しています。障害発生時は、一元化されたサポート窓口で問い合わせを受け付けます。サーバー、ストレージ、ネットワークのどこで問題が発生したのか。お客様側で煩雑な切り分け作業を行う必要はありません。全国280カ所、1600人以上のエンジニアを擁するサポート体制で、オンサイト保守のニーズにもスピーディーに対応します。

    • ジョルダン、東京海上アシスタンスが実感する成果とは

      森側:既に多くの企業がデルのAzure Stack HCIを利用していますね。具体的にどのような用途で活用し、どんな成果を上げていますか。

      津村氏:デルのAzure Stack HCIはワールドワイドで約700社の導入実績があり、国内はその1割にあたる約70社のお客様に採用されています。

      中でも大きな成果を上げている1社が、「乗換案内」で知られるジョルダン様です。サービスの多様化と利用の拡大に伴い、仮想化基盤とストレージの運用が煩雑化していた同社は、従来のWindowsサーバーとハードウエアのサポート終了を機に、Azure Stack HCIの導入を決めました。

      同社はコンシューマ向けサービスだけでなく、法人向けサービスも提供しているため、システムを止めることはできません。そこでデルの導入支援サービスを活用し、短期導入を実現。フェールオーバークラスタリングにより可用性も向上し、メンテナンスやシステム拡張時にもダウンタイムゼロでサービスを提供できるようになりました。

      南部氏:東京海上グループの一員として、ロードサービスをはじめとする保険関連サービスを受付・手配する東京海上アシスタンス様も、目を見張る成果を上げています。事故や病気・怪我によって保険サービスの適用を求めるお客様に対応するため、システムは24時間365日の安定稼働が求められます。

    • そこでAzure Stack HCIを導入し、15台の物理サーバーを、わずか2カ月で4ノードのHCI環境に集約。システムの可用性・安定性も高まり、止まらないサービスを実現しています。インフラを統合したことで、運用も大幅に効率化されました。長期的に見れば、運用コストは4分の3に削減できる見込みです。

       

    • 森側:短期間かつ低コストで既存インフラを統合化し、システムの安定性と運用効率も向上する。こうした点を評価し、企業の基幹ビジネスを支えるインフラとして採用するケースも多いのですね。

      南部氏:それだけでなく、リモート/ブランチオフィスなど小規模なインフラ環境のために導入するお客様も少なくありません。NVMeモデル、オールフラッシュモデル、フラッシュとHDDのハイブリッドモデルなど19種類の構成オプションがあるので、お客様の多様なニーズに合わせて最適なHCI環境を提供できます。

    • デルが提供すAzure Stack HCIのサーバーノードラインアップ

      [画像のクリックで拡大表示]
      エントリーモデルや、大容量ストレージモデルなど、検証済構成をパターン化(19オプション)することで顧客企業の選定の手間を最小化する

       

      津村氏:デルでは東京・三田オフィスに検証環境を用意し、お客様が導入したい構成のPoCもサポートしています。専用サイトでは技術情報も積極的に公開しています。Windows Server 2008/2008 R2のサポート終了が2020年1月に迫る中、従来のHyper-V 環境の移行先として、Azure Stack HCIを考えるお客様も増えています。今後もデルではグローバルで培った知見やノウハウを生かし、製品の性能向上とポートフォリオの拡充に努め、Hyper-V環境のモダナイズを強力に支援していく考えです。

    • 日経BP社の許可により、2019年11月12日~ 2020年2月10日掲載 の 日経 xTECH Active Special を再構成したものです。