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    DX時代に注目を集めるHCI
    今さら聞けない
    そのメリットと最新動向

    • 長年にわたって3層アーキテクチャで構成されてきた仮想化基盤。メリットも多いが、最近では問題も目立つようになってきた。複数製品を組み合わせる必要があるため導入や運用に手間がかかり、拡張性にも制約があるため、デジタルトランスフォーメーション(DX)への迅速な対応が難しくなっているからだ。この問題を解決できるものとして近年注目が高まっているのがハイパー コンバージド インフラストラクチャ(HCI)である。ここではHCIの特徴を確認した上で、その最新動向を紹介したい。
    • 俊敏な変化対応が難しい従来型の仮想化基盤

      デジタル技術を活用したビジネス変革をいかに実現していくか。このことが多くの企業にとって重要なテーマとなりつつある。もはやデジタルトランスフォーメーション(DX)は生き残りのために不可避になったといえるだろう。

      そのためにはITインフラの変革も必要になる。デジタル技術を活用したビジネスを迅速に展開していくには、ITインフラには高い俊敏性と可用性が求められるからだ。しかし従来のシステムインフラでこの要求に応えることは難しい。

      これまで多くのITインフラは、物理サーバーと共有ストレージ、そしてこれらをつなぐSANスイッチの3層アーキテクチャで構成されてきた。この物理インフラを仮想化し、多数の仮想マシンを動かすわけだ。この構成であれば、物理サーバーが障害を起こしても、即座にほかの物理サーバーへと仮想マシンを移動させ、サービスを継続できる。共有ストレージ上の仮想マシンイメージは、どの物理サーバーからでもアクセスできるからだ。

      しかしこの3層アーキテクチャが、DX時代には俊敏性を阻害するリスクになりつつある。

      その理由はいくつかある。まず新規導入する際に時間がかかる点だ。物理サーバー、共有ストレージ、SANスイッチのそれぞれについて製品選定を行い、これらの相性を確認した上でシステム設計を行うとどうしても時間がかかってしまう。また製品調達もそれぞれ行う必要があり、これらを組み合わせたシステム構築も時間や工数がかかる。

      運用に手間がかかる点も大きい。機器によって運用手順が異なるため、運用担当者はそれぞれの手順をマスターしなければならない。またソフトウエアを含めたライフサイクル管理も複雑になりやすい。

      業務部門やアプリケーション開発者からの要求がキャパシティを超えた場合には、ITインフラの拡張が必要になるが、これも厄介な作業になる。追加機器と既存機器との互換性を確認する必要があるからだ。世代の異なる機器が混在するようになれば、運用がさらに複雑になるという問題も生じてくる。

      そして当然ながら、保守対応も製品によって異なる。その結果、障害発生時の対応プロセスも複雑化し、時間がかかってしまう。

      このようなITインフラでは、急速なビジネス環境の変化への迅速な対応は難しい。そのため最近ではDX向けのシステムをパブリッククラウドで構築しようという動きもある。しかし企業システムすべてをクラウド化するのは現実的ではない。機密性の高い情報を扱うシステムや、社内の基幹システムと緊密に連携するシステムなどは、どうしてもオンプレミスで運用する必要が生じるからだ。

    • 導入/運用/拡張の俊敏性を高めるHCI

      それではこれからのITインフラは、どのように構築すべきなのか。この有力な手段として注目されているのがHCIだ。既にHCIについて理解している読者も多いとは思うが、ここでHCIとは何か、どのようなメリットがあるのかについて、簡単におさらいしておきたい(図1)。

    • HCIとは、物理サーバーとストレージを1つの筐体(ノード)に統合し、仮想化ソフトウエアや管理ソフトウエアなどもパッケージングした形で提供されている仮想化基盤のこと。その最大の特徴は、Software Defined Storage(SDS)技術によって、ストレージが仮想化されている点にある。ストレージ上のデータはソフトウエア機能によって、自動的にノード間でレプリケート(複製)されるわけだ。そのため複数のノードを高速ネットワークで接続すれば、すべてのノードの内蔵ストレージを共有ストレージとして利用できる。

      このHCIを活用することで様々なメリットが得られる。

      まず、導入時の時間と工数を大幅に削減できる。物理サーバー、ストレージ、仮想化ソフトウエアなど、仮想化基盤に必要な要素がすべてパッケージングされ、事前検証された状態で出荷されるからだ。製品間の相性問題に悩まされることがなく、設置してから本番稼働までの手間もかからない。

      次にハードウエアコンポーネントが統合されているため、運用方法も統一・簡素化できる。もちろん、どこまで運用を簡素化できるかは、HCIベンダーが提供する管理ソフトウエアにも左右されることになるが、それでも運用管理の負担が軽減されることは大きい。

      さらにライフサイクル管理も容易になる。単一製品で仮想化基盤を構成できるため、複数製品で異なるライフサイクルを管理する必要がなくなるからだ。もちろん保守対応も一元化できる。

      そして拡張性も高い。既存システムのネットワークに新規ノードを追加するだけで、キャパシティを増強できるからだ。障害発生などの理由でノードを入れ替える場合も、新規ノードを追加してここに仮想マシンを移動し、入れ替え対象のノードを撤去すればいい。ソフトウエアのバージョンアップも同様の方法で行える。これによってサービスを停止することなく、メンテナンスを行えるわけだ。

    • SDDCへの進化で市場をリードするVxRail

      このようなHCIのメリットを徹底的に追求することで、市場をリードしているのが、Dell EMCである。同社は顧客の要望に応じて幅広いHCI製品のラインアップを用意しているが、その中でも最も注目すべきなのが「VxRail」だ(図2)。

      この製品はDell EMCとVMwareの共同設計によって生まれたHCIアプライアンス。「Dell EMC PowerEdgeサーバー」をベースに、コンピューティング、ストレージ、仮想化、管理を統合した製品だ。ベースとなるDell EMC PowerEdgeサーバーは複数のモデルが用意されており、その上で動かす仮想マシンのワークロード特性に応じて選択することが可能だ。コンピューティングを支えるCPUとしては、インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーを搭載しており、高いパフォーマンスを発揮する。

    • この製品で特に注目すべきポイントは大きく3つある。

      1つ目は、ネットワーク構成が自動化されていること。これを可能にしているのがDell EMC独自のスマートファブリックサービスだ。これによってネットワーク構成と運用にかかる工数を98%も削減可能。インストール作業は約1時間、ノードの追加は約10分で完了する。

      2つ目が管理性の高さである。ハードウエアの運用管理を担う「VxRail Manager」を、「VMware vCenter Server」のプラグインにすることで統合している。そのためVxRailの運用管理者は、VMware vCenter Serverの画面だけでシステム全体の運用管理を行える。またVxRail ManagerはREST APIを提供しているため、ほかのアプリケーションとの連携も可能だ。

      そして最後の3つ目が「VMware Cloud Foundation(VCF) on VxRail」の存在である。VCFとは、VMwareが2016年に発表した「VMware Cross-Cloud Architecture」を支えるソリューションの1つ。仮想環境全体のモニタリングやログ管理、運用自動化、パッチ管理、コスト管理など、幅広い機能を提供するSDDC(Software Defined Data Center)プラットフォームだ。VCF on VxRailは、このVCFをVxRailで利用しやすくしたもの。これによって、ハードウエアとソフトウエアの両方を包括的にカバーしたより高度な運用と、ライフサイクル全体の簡素化が可能になる。これも、ほかのHCIには見られない特長だといえるだろう。

      VxRailのようなHCIを活用することで、ITインフラの俊敏性を飛躍的に高めることができる。また最近ではVMwareをパブリッククラウドに展開するソリューションも登場しているので、ハイブリッドクラウドへの展開も容易だ。DXをさらに推進させていくためには、こうした製品を活用することが有効な手立てとなるはずだ。

    • 日経BP社の許可により、2019年10月31日~ 2019年11月27日掲載 の 日経 xTECH Special を再構成したものです。