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    デジタル変革に役立つ講演を披露――製造業のDXはどう実現すべきか

    IoTやAIのテクノロジー最新動向や、最新IoT関連ソリューションを紹介する「Dell Technologies 製造業デジタル変革セミナー ~5G・IoT・AIにより加速するデジタル変革と適用業務の探求~」が2019年7月と8月に開催。デジタル変革を加速させる取り組みの講演が披露され、DXで悩みを抱える製造業各社が熱心に耳を傾けた。

    • デジタル技術の活用で業務の生産性を高め、新たな付加価値を生み出す「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が、製造業でも注目されている。だが、製造業の現実に即した“本質的なDX”の実現に向けては課題も山積しており、悩みを抱える企業は多い。

      経済産業省が2018年に公表したDXに関するレポートでは、企業はDXの必要性については理解しているものの、既存システムが事業部門ごとに構築されて全社横断的なデータ活用ができないケースや、過剰なカスタマイズがなされているなどによって複雑化・ブラックボックス化されていること、業務自体の見直しも求められる中で現場サイドの抵抗も大きく、いかにこれを実行するかが課題となっていることに言及。こうした課題を解決しなければ、DXの実現は不可能であり、2025年以降、年最大12兆円の経済損失が生じる可能性があることを「2025年の崖」として指摘し、DX推進のためのガイドラインも取りまとめている。

      また企業のDXの取り組み状況について、DellとIntelが42カ国、4600人を対象に行った調査によると、日本ではデジタルプランがない、あるいはプラン策定に手を付け始めたという段階の企業が約7割を占めているのに対し、海外ではプランを策定し、評価、導入している企業が増えている。

      こういった背景を受け、Dell Technologiesが開催した本セミナーには、デジタル化に関してそれぞれの状況でさまざまな悩みを抱える製造業各社が参集。熱心に耳を傾けた。

    • DX実現に必要なソリューションをシームレスに提供する――Dell Technologies

      DXの背景には、IoT機器の普及によるデバイスの増加、またそこから発生する爆発的なデータの増加がある。「“REAL TRANSFORMATION”デジタル変革を支えるDell TechnologiesとIoTへの取り組み」に登壇した、Dell Technologies CTOオフィス 事業開発ディレクターの二通宏久氏は「過去からの知見を上回る、もしくは過去に経験したことがないようなデータ分析、ビジネスの可能性がある」という。

       

      Dell Technologies CTOオフィス 事業開発ディレクターの二通宏久氏
    • データをフルに活用した本格的なDXの実現には、データの収集(IoT)、知見の獲得(AI)、知見の可視化(VR/AR)、素早い対応(アジャイル、ロボット)、またそれらを自律的に運用するプラットフォームも必要だ。同社は、2019年5月には、パブリック/プライベートクラウド、エッジを通じて、一貫性のあるインフラストラクチャーと運用環境をITリソースに提供する「Dell Technologies Cloud」も発表し、IoT、AI、VR/AR、ロボティクス、アジャイルに、それらを支えるマルチクラウドのプラットフォーム、またソフトウェア、ソフトウェア デファインド インフラストラクチャ、構築運用のサービスまで、シームレスに統一された形で提供できる体制を整えている。さらにプラットフォーム、アプリケーション、データマネジメント、コンサルティングまで、それぞれに特徴を持つ多くのパートナーと連携していることも強みだ。二通氏は「デジタル技術が広がる未来は、信じられないほどの可能性に溢れている。お客さまの求めている姿に応じて、パートナーと一緒に解決にあたっていく」と語った。

    • 「点」ではなく、目指す姿を見据えた全体最適のシナリオが重要――アビームコンサルティング

      「スマートファクトリーの進展の先にある未来工場とは」と題して登壇した、アビームコンサルティング 執行役員 プリンシパル P&T Digital ビジネスユニット IoTセクター長の橘知志氏は「デジタルテクノロジーは汎用技術であること。これを念頭に置き、未来を構想する必要がある」という。

       

      アビームコンサルティング 執行役員 プリンシパル P&T Digital ビジネスユニット IoTセクター長の橘知志氏
    • いわゆるエンタープライズシステムは、各業務に適合するパッケージとして提供され、その業務を担当する組織が導入することで効果をあげてきた。一方で、昨今のデジタルテクノロジー活用は、工程間でロボットを活用するとか、ある工程の一部にAIを使うなど、業務の一部、つまり「点」で存在している状態となっていることが多く、プロセス全体の最適化に至っていないという課題がある。そのため、新しい技術を導入しても期待ほどの効果が得られないと感じることが多いのではないかという。

      「『点』でのデジタルテクノロジー活用は、いずれ止まってしまう。バリューチェーン全体を範囲としたデジタルテクノロジー活用を進めるべきだ。単一のソリューションではなく、インテグレーション(統合)を前提とし、エコシステムを形成していくこと、また個別の事象、業務への対応ではなく、全体最適でシナリオを考えることが重要」と橘氏は指摘。部門横断での取り組みになるため、誰がリードするのかという課題はあるが「部門横断のプロジェクトを推進できれば、効果があがる確率は高い」というのが、同社の支援経験から得ている手応えだ。

      ではスマートファクトリーの先にある未来工場とはどのようなものなのか。デジタル化の道筋について「バリューチェーン全体をどのように効率化していくかという軸と、製品やサービスにどのように付加価値をつけていくかという軸があり、この2軸でデジタルビジネスを捉えていくべきなのではないか」と橘氏。つまり未来工場には、1つ目の軸に沿ったスマートファクトリー化された姿と、2つ目の軸であるビジネス変革を実現するイノベーティブな姿とがあり、前者はプロセス変革(新しいビジネスモデルに適応可能な、モノづくりとバリューチェーン改革)を、また後者はプロダクト変革(新しいビジネスモデルに適応可能な、デジタル化された製品開発、サービス創出)を経て、いずれも新しいビジネスの創出に向かっていくというのが同社の考えだ。

      同社のIoTサービスは、未来工場の戦略など事業の方向性の見定め、業務プロセス自体の再設計、プラットフォームの導入から、データ分析、予測モデルの策定まで、非常に幅広い。あるべき姿や方向性を示すだけでなく、現場まで踏み込み、計画から実行、導入後のプロセス定着までを一気通貫で支援するのが特徴だ。アセスメントサービスのニーズも高く、課題整理、取り組みテーマと期待効果の策定、ロードマップとアプローチの作成、また散財するPoCの整理やグランドデザインなどにより、スマートファクトリー化の次の一歩を明確にすることができるという。

      「スマートファクトリー化に取り組むことだけではなく、将来の目指す姿を描いて、何のために取り組むのか目的を明確化することが非常に大事なポイントになる」と橘氏は締めくくった。

    • 自社の製品やラインに適したデータ収集・分析が可能か――アクロクエストテクノロジー

      アクロクエストテクノロジー プロセス&マネジメント ディビジョン シニアテクニカルアーキテクトの鈴木貴典氏は、「エッジコンピューティングとAIの価値と活用のしどころ」と題し、エッジコンピューティングにフォーカスして講演した。

      アクロクエストテクノロジー プロセス&マネジメント ディビジョン シニアテクニカルアーキテクトの鈴木貴典氏
    • エッジコンピューティングの主なメリットは、データ量やコストの削減、応答時間の高速化、セキュリティである。最近はエッジコンピューティングが注目されていることもあり、単に機器からデータを収集して、それを可視化、分析するコンパクトなソリューションも見られるが「局所的な改善で、そもそも目指す姿には向かっているのかという疑問がある。エッジとセンターサーバやクラウドとの連携、もしくはエッジ同士の連携、あるいは複数のエッジを合わせて分析するといった活用がなされないと、価値を発揮できない」と鈴木氏は指摘する。

      製造業でエッジコンピューティングが有効なユースケースとして、鈴木氏はフィルター/集計、テキストや数値を扱う機械学習・AI、画像や映像を扱う機械学習・AIの3つをあげる。まずフィルターや集計は、指定した条件にマッチした場合のみデータを送信する、一次集計をするといった使われ方だ。具体的には、電流/電圧データ解析、振動解析、パルス波形などがある。テキストや数値を扱う機械学習・AIは、時系列データ、PLCデータ、また生産性や稼働率などの分析に使われ、具体的には異常検知、劣化診断、予知保全、生産計画予測など。画像や映像を扱う機械学習・AIは、カメラ画像に対する画像処理・分析、通過する物体の識別、不良品の検出といった使われ方が主で、具体的には外観検査、ライン監視、製品仕分け、あるいは従業員の行動分析などで活用される。

      製造業におけるエッジコンピューティングを導入する際の注意点は、機種、設置環境、運用/メンテナンスの3つ。機種は、CPUでいいのか、GPUが必要なのか、イントラまたは外部への通信機能は必要か、当然ながら機器とのインタフェースが該当設備に適合するかも重要だ。設置環境については、防滴/防塵、他のデバイスとの接続や構成もあるが、工場では特に電源確保に注意が必要だという。またリモートでのメンテナンスやセキュリティも考慮しなければならない。鈴木氏は「多くのエッジを導入すると、それだけコストもかかるしメンテナンスも大変。トータルでビジネスの収益向上やコストダウンにつながっているかという視点が重要になる」と指摘する。

      また機械学習・AIの導入について、製造業に適したアプローチは、正常時のデータを元に、異常判定ができることだという。「製造業ではそもそも異常はなかなか発生しない。まれにおこる異常のインパクトが大きいので分析が必要になるわけだが、それには正常系のデータをベースに異常を判定できる必要がある」(鈴木氏)。もう一つのポイントは、製造品のバリエーションに対応できるかどうかだ。

      「製造業は、同じようなことをやっているように見えてもそれぞれ作っているモノが違う。最終的には自社の製造品、製造ラインに適したデータ収集、分析が可能かどうかがポイント」と鈴木氏は説明した。

    • データはデジタル変革の核――Dell Technologies

      最後の講演は、Dell Technologies システムズ エンジニアリング統括本部 製造SE部 部長の島野知治氏による「製造業のDigital Transformationを支えるDell Technologiesの最新ソリューションと事例のご紹介」。島野氏は「データで事業価値を高めるには、良質なデータの収集、データを分析するためのコンピューティングリソース、それを活用する人が必須。さらに事業価値を底上げするのが、運用の効率性向上、リスク対策、効率的な投資である」と述べ、それに対する同社の支援として、データの取得、分析、活用について、それぞれEdge、プラットフォーム、人にテーマを絞って説明した。

      Dell Technologies システムズ エンジニアリング統括本部 製造SE部 部長の島野知治氏
    • データの取得については、実績ある「Edge Gateway」シリーズを展開している同社だが「IoTという観点では相互接続性とオープンな接続性に注力している」(島野氏)とし、オープンソースプロジェクト「EdgeX Foundry」を紹介。データの分析については、同社が「より価値ある知見を得るための高速PDCAを回す核」と定義している統合プラットフォームについて述べ、「業務、分析、ITの部門が連携して、素早い事業判断をするためには非常に重要」とした。データを活用するデータサイエンティストは、自社内にノウハウを蓄積でき、業務改善が加速できるなどの理由から社内で育成することを勧め、同社の育成サービスを紹介した。

      島野氏は、同社自身もデジタル変革に取り組んでいることに触れ、「データはデジタル変革の核となる。データ変革はどこからでもスタートすることができる。われわれも同じ製造業として、皆さんと一緒にデジタル変革を進めていきたい」と語った。

    • この記事は TechFactory(http://techfactory.itmedia.co.jp)に2019年9月に掲載されたコンテンツを転載したものです。https://techfactory.itmedia.co.jp/tf/articles/1909/30/news020.html