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    最新鋭「操船シミュレータ」を支えるワークステーションの仕組み

    • ビジネスVR/ARの活用で考えておくべき注意点とは

      ここ数年でデジタル映像技術は長足の進歩を遂げた。アミューズメントパークやエンターテインメント施設などでも、VR/ARコンテンツを用いたゲームやアトラクションが続々と登場している。さらに、こうした動きは、企業のビジネスや観光分野にも波及しつつある。製品の組み立てや設備保守に3DCGを利用したり、歴史的な遺構や建物などをバーチャルで復元したりといった取り組みが進んでいる。おそらく今後もいろいろな分野で、最新の映像技術を駆使したサービスが生まれてくるだろう。

       ただし、VR/ARコンテンツを活用する際は、注意すべきポイントも存在する。それはハイクオリティーな映像を描き出すハードウエアの構成だ。コンテンツを動かすには、言うまでもなく高性能なプロセッサーやハイエンドのグラフィックス機能が不可欠となる。一般的にこうした環境を構築するには、タワー型のワークステーションを利用することが多いが、それなりの設置スペースが必要になる上に、メンテナンス性も下がってしまう。コンテンツ自体の魅力を高めることももちろん重要だが、サービスを支えるシステム基盤にも十分な目配りが求められるわけだ。

       そこで注目したいのが、国内最大規模を誇る“海の総合コンサルティング企業”である日本海洋科学の取り組みだ。同社では、海事、海外造船海運、船舶運航、船舶建造・保守、海事教育訓練など、幅広い領域にわたるコンサルティングサービスを提供。その一環として、船舶操縦の教育・訓練に用いられるVRコンテンツをベースにした「操船シミュレータ」の開発・提供も行っている。

    • ここでは、船体の動きや風、波、潮流の影響などを詳細に計算。その結果をフルハイビジョン~4K対応の高精細映像で表示することで、実際の船舶の航行環境をリアルに再現。海洋関連の各種機関や学校にも数多く導入されており、新人船員の教育や安全運航のための取り組みなどに役立てられている。次ページ以降ではこの操船シミュレータのシステムに使用されている仕組みについて紹介する。

    • 最新操船シミュレータに使用されている仕組みとは

      前ページで触れた通り、日本海洋科学のコア事業は海洋や船舶に関連するコンサルティング業務である。中でも海事コンサルティングでは、様々なシミュレーション技術を活用して、港湾や海上空港、大型橋梁などを設計する際の調査や安全性評価などを行っている。操船シミュレータも、そこで活用されるシミュレーションツールの1つだったという。

      株式会社日本海洋科学
      技術開発グループ
      グループ長
      藤本 弘司氏

      「当社では二十数年前から操船シミュレータを提供していますが、実は最初は販売を目的に開発したわけではありません。もともとは、新しく建設される構造物が船舶からはどう見えるのか、また実際にその場所をどのように航行すればよいのかといったことを事前に検討するためのツールでした。しかし親会社である日本郵船をはじめ、様々な関係者から船舶の操船訓練に使いたいとのご要望をいただくようになりました。そこで、独立した商品として外販を開始したのです」と日本海洋科学の藤本 弘司氏は明かす。

      初期にはUNIXベースのグラフィックワークステーションを利用していたが、どうしても価格が高額になってしまう点が課題だった。そこでWindows PCの高性能・低価格化が進んだことを機に、PCワークステーション+ハイエンドグラフィックボードの採用を決断。それ以降、ソフトウエアもWindowsベースに開発を進め、現在はWindows 10とPCワークステーションを組み合わせてシステムを構成している。

      「実際に船舶から見えるのと同じ映像を毎秒30フレームで周囲に投影するため、CPUやグラフィックボードには非常に大きな負荷がかかります。また、決められた日時に確実に訓練を実施したいというお客様も多いので、耐障害性や信頼性の高さも重要なポイントになります。そこで、これらの要件をクリアすると同時に、コストパフォーマンスが高くサポート体制も充実したデルのワークステーションを活用し続けています」と藤本氏は話す。

    • ラック型モデルで保守性向上や省スペース化を実現

      同社が提供する操船シミュレータには、実際の船橋(ブリッジ)を模した空間に実物の航海機器まで据え付けたフルミッションタイプや、限られたスペースにも設置できるコンパクトタイプの大きく分けると2つが用意されている。ただし、そのいずれにおいても、周囲360°の映像を計算して描画する設計を求められるケースもあり、その場合1システムあたり十数台ものワークステーションが用いられる。

    • 「以前はタワー筐体の製品を主に利用していましたが、スペースを取る上にメンテナンス作業も大変でした。そこで数年前からラック型ワークステーションである『Dell Precision 7920 Rack』や『Dell Precision 3930 Rack』などのラック型製品を採用。よりコンパクトにシステムを収容することが可能になりました。また、グラフィックボード増設や配線作業が容易に行える、本体重量が軽くなり消費電力も下がるなど、様々なメリットを得られています」と藤本氏は話す。

       Dell Precision 3930 Rackがリリースされる前にはやむなく他社製品を利用したこともあったが、性能やサポートの点でトラブルも少なくなかったという。ちなみに1UタイプのDell Precision 3930 Rackなら、システム全体が19インチラック1本に収まってしまう。

    • 実際に利用されているワークステーション。以前はDell Precision 7920 Rack(2U)のみを使用していたが(写真左)現在は、Dell Precision 3930 Rack(1U)も採用。これにより更なるシステムの大幅な省スペース化・省電力化が実現すると共に、各種のメンテナンス作業なども効率的に行えるようになっている
    • また、カスタマイズが柔軟に行える点も、デル製品の大きな魅力だ。「例えばDell Precision 3930 Rackでは、インテル® Xeon® プロセッサーに加えて、インテル® Core™シリーズのプロセッサーも選べます。CPUの性能がCore iシリーズのプロセッサーで十分カバーできる場合は、お客様の予算に応じてこちらを提案するケースも少なくありません」と藤本氏は続ける。

       一方、強力なパフォーマンスが求められるグラフィックボードに関しては、自社製アプリケーションとの親和性およびライフサイクルの長さから、NVIDIAの「Quadro」シリーズを採用。「ラック型の場合は『NVIDIA® QUADRO® P5000』や『NVIDIA® QUADRO® P4000』が多いですが、最近では『NVIDIA® QUADRO® P2000』の性能も向上していますので、こちらを選ぶ場合もあります」(藤本氏)。

    • 充実したサポート体制も製品選定の決め手に

      こうした性能・信頼性・柔軟性の高さに加えて、同社がデル製品を選ぶもう1つの大きな決め手になっているのが充実したサポート体制だ。「当社では遠方のお客様も多い上に、24時間のサポートを望まれるお客様もいらっしゃいます。もちろん、近場の場合はわれわれが駆け付ければよいのですが、人数や時間の問題で、そうもいかないケースも少なくありません。その点、デルでは、当社から販売したワークステーションについて直接サポートを行ってもらうことが可能です。このおかげで助かったことが何度もありますね」と藤本氏は話す。

       同社の操船シミュレータは、海技大学校や海上保安大学校、神戸大学/商船高等専門学校、民間海運会社といった国内の機関・企業に加えて、フィリピンの船員養成学校などでも利用されている。こうした海外のユーザーに対してもグローバルなサポートを提供できるということは、ビジネス上も非常に重要なポイントなのである。

       なお、操船シミュレータと聞くと、悪天候下や狭い港湾内などでの操船を学ぶためのものというイメージを持ちがちだ。しかし近年では、それ以外の利用法も広がりつつあるという。「例えば『BRM/BTM(ブリッジリソースマネジメント/ブリッジチームマネジメント)訓練』もその1つ。船舶を安全に運航する上では、船員間の円滑なコミュニケーションが欠かせません。特に最近では、船長以外のスタッフがすべて外国人船員という場合も多いので、コミュニケーションの重要性がさらに高まっています。そこで、チームとしての適切なアクションを学ぶための場として、操船シミュレータの環境を活用しているのです」と藤本氏は説明する。

       このように、幅広い用途で活用が進む操船シミュレータだが、同社では今後もさらなる改善に取り組んでいく考えだ。藤本氏は「システムの操作支援にAIを活用するなど、挑戦したいテーマはいろいろあります。是非デルにも、われわれのニーズに合った製品を提供し続けてもらいたいですね」と今後を見据えている。

    • 日経BP社の許可により、2019年10月4日~ 2019年12月26日掲載 の 日経 xTECH Active Special を再構成したものです。