• 装飾

    世界に誇る「バルクの大島」の設計業務を支えるワークステーション活用法

    • 設計作業が全体品質を左右する

      梱包されていない穀物、鉱石、セメントなどを輸送する「バルクキャリア(ばら積み貨物船)」の建造で世界屈指の実績を誇る大島造船所。1973年に創業を開始した、長崎県西海市に本社を置く企業だ。技術・品質の進化と船型の多様化を追求し続ける同社は、年間約40隻のバルクキャリアを建造・販売し、累計建造数は800隻を超える。自他ともに認める「世界のバルクの供給基地」である。

       世界の船主の高い要求水準に応えるため、同社はQCD向上に継続的に取り組んでいる。技術を磨き品質を高め、コストを低減し、納期の短縮化を進める。モノづくり企業にとって不変のテーマだが、造船会社がこれを実現するためには、上流工程の設計業務の効率化が欠かせないという。設計から引き渡しまで2年程度に及ぶ建造プロジェクトの中で、設計は全体の3分の2の期間を費やす重要な作業だからだ。

      造船は受注産業である。積載容量の拡大、安全性・効率性の向上に加え、近年は環境に配慮した排出規制対応も強く求められている。外観は同じ船に見えても、内部の構造や仕様は1隻ごとに様々だ。船の建造は大規模で複雑であり、小型の工業製品のように試作品を作って検証することが難しい。設計段階で解析やシミュレーションを行い、課題や懸念があれば、この段階で徹底的に潰す。建造プロジェクトの中で設計業務が大きな比重を占めるゆえんである。こうした作業の繰り返しが品質を高め、結果的に納期の短縮化につながっていくわけだ。

      こうした同社の設計作業を支えているのが、ワークステーションである。造船会社の、いわば生命線でもある重要なツールだ。同社はどのような基準でワークステーション選びを進め、「バルクの大島」のQCD向上に取り組んでいるのか。次ページ以降では、同社の設計作業の舞台裏を考察していく。

    • 設計用3D CADソフトを動かすPCのスペック不足が深刻に

      大島造船所のワークステーションを使う設計チームは約100名の編成。船体を複数の区画に分け、各担当者が造船用3D CADソフトを使い、設計・デザインからモデリング、その性能解析などの作業に従事する。

      株式会社大島造船所
      情報システム部 次長
      石川 一郎氏

      同社が利用する造船設計用3D CADソフトは、もともと汎用コンピュータでの利用を前提に開発されたもの。その後、PC利用版も提供されるようになったが、通常の事務用PCではスペックが追い付かない。3次元データを扱うため、高性能なコンピューティングパワーが必要になるからだ。「当初は『レスポンスが遅い』『描画に時間がかかって仕事にならない』などのクレームが現場から殺到しました」と同社のIT環境を統括する情報システム部の石川 一郎氏は振り返る。

      近年は積載効率を高める高機能化、省エネ・省資源を強く意識したエコシップ化のニーズが高まっている。これに伴い、造船設計データも大容量化する傾向にあるという。「担当の区画の作業が終わらないと、次の工程に進めない。作業の遅れは、品質の劣化や納期の遅れにつながる恐れがあります」と同じく情報システム部に所属する家永 修氏は話す。

    • 株式会社大島造船所
      情報システム部 情報システム課長
      家永 修氏

      そこで作業環境の向上を目指し、同社が2002年より導入したのがデル製ワークステーションである。「専用のグラフィックボードを備え、高性能で信頼性も高い。デル製ワークステーションを導入したことで、噴出していたクレームは一気に沈静化しました。構造もシンプルでコンパクト。メモリ増設が必要になっても、自分たちで簡単に行えます」と設計現場のIT運用を担う平山 隆男氏は評価する。

      ハード面に加え、充実したサポートサービスも大きな決め手になった。「デル製ワークステーションは長期の5年保証に対応しています。期間内は、故障があれば、すぐにオンサイト保守を受けられる。万が一、故障しても、業務の停止を最小化できる安心感は大きい」(石川氏)。

    • 最新ワークステーションの活用で作業がより快適に

      デル製ワークステーションを高く評価する同社は、その後も利用を継続。設計技術者100名が使うワークステーションはすべてデル製で統一している。更改時期を迎えたものは、一部の予備用端末を残し、順次入れ替えている。

       最新機種は2018年10月に導入した約10台の「Dell Precision 3430 Tower」だ(写真)。インテルXeon E-2124 プロセッサー、高速グラフィックス処理をサポートするNVIDIA Quadroプロフェッショナルグラフィックス P620を搭載。メモリは32GB、拡張ストレージにはSATA SSD 256GBを採用した。

    • Dell Precision 3430 Tower

      インテルプロセッサと最新NVIDIA Quadroグラフィックスカードにより、CAD、デジタルコンテンツ制作およびビジュアライゼーションを強力にサポート。要求の厳しいプロフェッショナルワークフローに最高のパフォーマンスと機能をもたらす。さらに最大64GBの2666MHz高速メモリを搭載。2.5インチまたは3.5インチSATA HDD/SSD、PCIe NVMe SSDを選択できる拡張ストレージも最大6TBの構成が可能だ

    • 株式会社大島造船所
      情報システム部
      技術システム課 担当係長
      平山 隆男氏

      しかもPrecisionシリーズにはワークステーションを自動調整してアプリケーションの実行速度を向上させる機能、システムアップデートを自動実行してシステムの信頼性を向上させる機能、リソースのボトルネックに対処する分析機能などが標準装備されている。「快適に使えて故障リスクも低い。以前に比べて処理がよりスムーズになり、現場の満足度も向上しています」と平山氏は語る。

      高品質なサポートサービスに対する現場の満足度も高い。デルのプロサポートサービスは、自社運営の宮崎カスタマーセンターで提供する。「サポート担当者の技術力が高く、話が通りやすい。問い合わせのレスポンスも迅速・的確と好評です」と家永氏は現場の声を代弁する。

    • 現場の設計業務のイメージ

       

      海外でも均質な製品・サポートの提供を受けられる点も評価している。同社は日本とベトナムのグローバル設計体制を敷いているからだ。「日本と同じ仕様、スペックのワークステーションをベトナムでもスムーズに調達できます。故障した際も現地のオンサイトサポートがあるので安心です」と石川氏は語る。

    • 未来戦略の実現に向け、造船設計のデジタル化を進める

      造船業は世界中の船主から建造依頼を受け、資材の調達も世界規模で行うグローバル産業である。市場環境の変化は事業に大きく影響する。近年は世界経済の減速傾向を反映し、事業環境はますます厳しさを増している。

      この中で持続的成長を実現するため、同社は2つの未来戦略を掲げている。1つは、新船型開発の推進だ。窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)排出規制に加え、温室効果ガス(GHG)の削減を視野に入れた最先端の技術開発を進め、厳しさを増す環境規制に対応したエコシップづくりを加速する。もう1つは、知能化工場の展開だ。AI技術を取り入れ、工場を“知能化”することで世界屈指の高効率工場を目指す。

      こうした取り組みの一環として、造船設計のデジタル化対応も進めていく。「日本の労働力人口は下降線を辿り始めています。たとえ働き手が少なくなっても、競争力を発揮するためには生産性の維持・向上が欠かせません。AIをはじめとする最新デジタル技術を活用し、設計業務の省力化・省人化を図りたい。新たな取り組みに向け、新技術を取り入れた製品の提供はもちろん、グローバルで知見を持つデルには、ベストプラクティスなどの有意義な情報を数多く提供してほしい」と石川氏は期待を込める。

      大島造船所は今後も造船設計業務の標準端末としてデル製ワークステーションを活用し、造船設計のデジタル化を視野に入れた継続的なQCD向上活動を推進していく。これを競争力の源泉に変え、「世界のバルクの供給基地」としての存在感をより高めることで、世界の海運業の発展に貢献していく考えだ。

    • 日経BP社の許可により、2019年4月26日~ 2019年7月25日掲載 の 日経 xTECH Active Special を再構成したものです。