「データセンターに行けない」中で浮上する“リモート管理”の目を見張る可能性とは

ニューノーマル時代を迎え、事業部門だけでなく情報システム部門にも在宅勤務が求められている。会社のサーバ室はもちろん、データセンターにも気軽に行けない状況で、サーバやストレージといった「物理的なITインフラに関するリモート管理」が注目されている。リモートでどこまで対処できるのか、注目すべき機能とは何か。最新技術を解説する。

企業でクラウドサービスを利用することが珍しくなくなった今でも、物理的なITインフラが必要なくなったわけではない。デジタルトランスフォーメーション実現のためのPoC(概念実証)をしたい、データ分析や機械学習をしたいといった新しい取り組みではリソースの見積もりが難しく、オンプレミスの方が試行錯誤しやすいといえる。

ただ、オンプレミスで環境構築をする場合に気になるのはITインフラの運用管理だ。試行錯誤がしやすいといっても「オンプレミスにしたら運用管理の負荷が高すぎる」では意味がない。さまざまなベンダーから運用管理を支援する製品やサービスは提供されているが、自社に最適なものを一から選定するのは大変で、導入コストも気になる。

もう一つ気になるのは「リモートでどこまでできるか」だ。ニューノーマル時代を迎え、気軽にデータセンターに行けない状況ではリモートでの作業が必要不可欠だ。

PowerEdgeに組み込まれた「サーバの中のサーバ」

デル・テクノロジーズ データセンターコンピュート& ソリューションズ事業統括 製品本部 シニアプロダクトマネージャー 岡野家和氏

サーバをリモートで管理する仕組みは幾つかあり、代表的なものに「IPMI」「Redfish/REST API」「WS-MAN API」などのインタフェースがある。

これらのインタフェースを利用すれば「サーバのリモート管理」自体は実現できる。ただ、重要なのは「リモート管理ができるか否か」ではなく「自社に最適な運用管理をリモートで実現すること」だ。

デル・テクノロジーズが提供する「Dell EMC PowerEdgeサーバ」(以下、PowerEdge)にはリモート管理用のプロセッサ「iDRAC」(integrated Dell Remote Access Controller:アイドラック)が搭載されている。同社の岡野家和氏(データーセンターコンピュート&ソリューションズ事業統括 製品本部 シニアプロダクトマネージャー)は、このiDRACを「サーバの中のサーバ」と表現する。

「PowerEdgeサーバに組み込まれているiDRACは、サーバとは別のプロセッサを持ち、専用のNICとストレージも持っている。

PowerEdgeの中に独立したサーバがあると言っていい。iDRACはサーバ本体の機能を中央で管理する頭脳や心臓であり、サーバが提供するさまざまな機能の土台になる」(岡野氏)

IPMIやRedfishといったインタフェースはもちろん、システム監視のためのSNMPやログ管理のためのSyslogなどのプロトコルもiDRACはサポートする。ネットワーク管理ソフトウェアの「Zabbix」、構成管理ソフトウェアの「Ansible」といったOSS(オープンソースソフトウェア)ツールとの連携も強化している。

iDRACは、障害の影響を受けにくいというメリットがある。プロセッサやネットワークがサーバから独立しているため、サーバに障害が発生したときもその影響をほとんど受けずにリモートで作業できる。

ITインフラ全体のライフサイクルを管理できるツールに進化

デル・テクノロジーズはサーバのライフサイクルを適切に回すことで「効率性、柔軟性、堅牢(けんろう)性に優れた状態でITインフラを運用できる」と考えている。ここで言うサーバのライフサイクルとは「デプロイ」「アップデート」「監視」「メンテナンス」という各フェーズで構成されるサイクルのことだ。

サーバのライフサイクル全般を支援するiDRAC

「ITインフラ管理において中心となるサーバの管理機能が極めて重要だと認識している。デル・テクノロジーズのシステム管理製品の設計理念には『統合、シンプル、自動化、セキュリティ』がある。最新世代である『iDRAC9』もこの理念の下で改善を続けている」(岡野氏)

デル・テクノロジーズの相場宏二氏(カスタマーソリューションセンター センター長)は、ライフサイクルのフェーズごとに有効なiDRACの機能を説明する。

デル・テクノロジーズ カスタマーソリューションセンター センター長 相場宏二氏

「デプロイフェーズではインベントリ情報検知、構成確認、OS展開の機能が有効だ。アップデートフェーズでは、BIOS、ファームウェア、ドライバなどを更新できる。監視フェーズでは、ヘルス情報やアラート、パフォーマンス、電力消費などのモニタリングが役に立つ。メンテナンスフェーズではパーツ交換時のサーバ管理や再プロビジョニングを支援する。iDRACは、単にモニタリングしたり障害発生時にサーバを再起動したりするものではなく、運用管理業務そのものに関わっている。基本的にエージェントをインストールせずに利用できる」(相場氏)

他のソフトウェアやプラグインと組み合わせることでiDRACの管理の幅を広げることができる。デル・テクノロジーズの運用管理ソフトウェア「OpenManage Enterprise」と連携すれば、数千台規模のサーバを統合管理できる。「Microsoft System Center」や「Microsoft Windows Admin Center」などのシステム管理コンソールからiDRACの機能を利用できるプラグインもある。

ただ、こうしたソフトウェアやプラグインを使わなくても複数サーバの管理は可能だ。

「それぞれのサーバのiDRACを連携させることで、1つの画面で他のサーバのiDRACを操作できる『グループマネージャ』を搭載している。iDRACはPowerEdgeに標準搭載しているので、新たにリモート管理ツールを導入しなくていいのは大きなメリットだ」(相場氏)

こうして見てみると、デル・テクノロジーズはiDRACを「サーバのリモート管理ツール」ではなく「サーバのライフサイクル管理ツール」と考えていることが分かる。

組み込み型「SupportAssist」と「ProSupport Plus」でさらなる効率化

岡野氏によると、リモート監視機能に関する問い合わせが増えているという。

iDRAC9に組み込まれたSupportAssist

「SupportAssist」はサーバやストレージ、ネットワークなどでエラーや障害が発生した際に、デル・テクノロジーズのテクニカルサポートに自動通報する機能だ。専用ソフトウェアをサーバにインストールして使う方法もあるが、iDRAC9には、このSupportAssistがハードウェアレベルで組み込まれている。

「しきい値を超えるなど問題が発生すると、SupportAssistが自動的にログを収集してテクニカルサポートに転送する。『ファンが壊れている』『メモリが壊れそうだ』などサポート対応が必要とテクニカルサポートが判断した場合、顧客に連絡後、修理やパーツ交換を実施する。ログの取得とテクニカルサポートへの通知はSupportAssistが自動で実施するため、問題解決までの所要時間を最小限に抑えることができる。iDRAC9の設定画面でSupportAssistを有効化し、テクニカルサポートが連絡する電話番号などの情報を入れるだけで利用できる。電話サポートにかかる時間を短縮し、ITサービス提供のサービスレベルを向上させることができる」(岡野氏)

岡野氏によると、専任のテクニカルアカウントマネジャーをアサインする「ProSupport Plus」と組み合わせることで「障害解決までの時間を最大90%短縮できる」という。

「OpenManage Enterpriseで、SupportAssistと電力管理ツールの『Power Manager』、ファームウェアやドライバのアップデートとリポジトリを管理する『Update Manager』を連携させれば、社内のデータセンターにある全機器の稼働状況を管理できる。障害があった場合の障害通知や状況把握も容易になるだろう。さまざまな他社ツールとも連携できるため、ITインフラ管理にはOpenManage Enterpriseを活用してほしい」(相場氏)

ニューノーマル時代に向けて、物理的なITインフラのリモート管理の重要性はますます高まっていくだろう。効率化や自動化の流れの中で見過ごされがちだった「サーバのリモート管理」といった基本的な機能をこのタイミングで見直してみてはいかがだろうか。

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この記事は @IT(https://www.atmarkit.co.jp/)に2021年1月に掲載されたコンテンツを転載したものです。
https://atmarkit.itmedia.co.jp/ait/articles/2101/18/news002.html

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