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    「技術的難易度」と「人材不足」 AI活用を阻む「二大関門」を突破する方法とは

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    • AIの活用は、デジタルトランスフォーメーションの実現に向けた重要な戦略事項である。しかし、実際にAIを活用し成果を上げている企業は少ない。技術的難易度や人材不足など様々な課題が障壁となっているからだ。この課題解決に向け、Dell EMCとインテージテクノスフィアは新しいソリューションの提供を開始した。両社の“タッグ”により、AIの導入・活用から業務実装による価値創出までトータルにサポートすることが可能になるという。

    • 「AIに対する“過信”と“誤解”がAI活用のブレーキに

    • デジタル時代のビジネス戦略には「データ」が重要になる。多種多様なデータを分析することで、ビジネス変革や新規事業の創出につながるからだ。そのテクノロジーとして注目されているのが、機械学習(マシンラーニング)や深層学習(ディープラーニング)に代表されるAI技術である。

      機械学習や深層学習は数十年前に出現したテクノロジーだが、近年の進化には目を見張るものがある。また、IoTの普及に伴い、AIに利用可能なデータ量が莫大に増えるとともに、HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)が主流化し、データの演算処理能力も飛躍的に向上した。これにより、人手による分析では検出が困難だった傾向やパターンを素早く特定できるようになった。デジタルトランスフォーメーションによる企業変革のチャンスは大きく広がったといえるだろう。

      しかし、AIをビジネス活用し成果を上げている企業はまだ少ない。その理由について、Dell EMCの増月 孝信氏は次のように述べる。

      「まず挙げられるのが、AIインフラの複雑性です。AIインフラは、AIエンジンや各種分析ツールなどのソフトウエア、分析基盤となるデータベースやHPCなどのハードウエアなどで成り立つ複雑な構成。最適なソフト/ハードを選定・調達し、システムとして構築するのは非常に難しい作業です。パフォーマンスを出すためのチューニングも必要です。こうした作業には、通常12~18カ月はかかります」

      仮にAIインフラができたとしても、すぐに活用フェーズに移行できるわけではない。PoCによる効果検証を実施し、ビジネス実装に向けた課題の抽出と改善が必要になる。

      AIに対する“過信”も大きな問題だ。AIの期待が大きいあまり、経営陣はAIがあれば何でもできると思っている。「しかし、AIは万能ではありません。大切なことは、自分たちが抱いている課題を明らかにし、何をどのように解決したいのか目的を持つこと。これがあいまいなままAIに飛び付くと、何をすべきなのか方向性が見えなくなり頓挫してしまいます」と数多くのAIソリューションを提供する実績を持つ、インテージテクノスフィアの饗庭 忍氏は話す。

    • 肝心のデータに関しても、膨大なデータがあるといいながら、実はそれほどでもないことも少なくない。「AIを学習させるための教師データの作成には成功例だけでなく、失敗例も必要なのですが、その失敗例のデータがない。設備機器の稼働記録が“生ログ”のまま眠っていることもある。そもそもデータの収集・蓄積方法に問題があることに気付いていないケースもあります」と饗庭氏は指摘する。

      また、AIのビジネス活用にはインフラの構築を担うIT部門、AI技術に精通したAIエンジニア、データ分析を担うデータサイエンティスト、分析結果を業務で活用するビジネス部門の連携が不可欠だ。

    • 海外企業はトップダウンの文化が根付いているため、全体を見て、組織や人材の整備を進めていく。AI活用先進企業の多くはこのタイプだ。「それに対し、日本企業はボトムアップの文化が強く、組織や人材の整備がなかなか進めることが難しい側面があります」と増月氏は指摘する。

      データサイエンティストに対する“誤解”も根深い。データサイエンティストはビッグデータを分析し、そこからビジネスに活用できる価値を引き出す専門技術者。「その存在の大きさから、データサイエンティストに分析だけでなく、基盤の構築や運用まで任せてしまうことが多い。そこに手間と時間を取られると、本来の分析作業に専念できず、能力を十分に発揮できません」とDell EMCの内田 信也氏は指摘する。

    • 迅速に導入展開できる検証済みAI環境をパッケージ化

    • このようにAIのビジネス活用には様々な課題が付きまとう。これを解決するため、Dell EMCは2018年12月4日、新しいソリューションを発表した。それが「Dell EMC Ready Solutions for AI」(以下、Ready Solutions for AI)である。

      AIに最適化されたシステム設計と、事前検証済みのAIフレームワークやライブラリ、ハードウエアをパッケージ化して提供する。「AIインフラの構築負荷と、データサイエンティストの業務負荷を大幅に軽減できます」と増月氏は強みを述べる。

      新ソリューションはAIインフラの導入を簡素化するハードウエアとソフトウエアをセットにした2つのパッケージソリューションと、それらの導入サービスで構成される。

      簡易さを求めればクラウドサービスがベストと思われがちだが、ビッグデータ分析には高度なコンピューティング能力が求められる。重要情報や機微情報を扱うことも多い。ビッグデータ送信の通信コストとセキュリティ確保の観点から、2つのソリューションはオンプレミスでの利用を念頭にパッケージ化したという。

      それではReady Solutions for AIは、どのような価値を提供できるのか。まず2つのパッケージソリューションを紹介したい。

      1つは「Deep Learning with NVIDIA」だ(図1)。これはDell EMCとNVIDIA社の共同エンジニアリングによる深層学習に最適化された基盤。世界シェアNo.1のDell EMC PowerEdgeサーバーとNVIDIA Tesla V100 Tensor Core GPUをベースにしたマルチノード分散学習環境により、大規模データを高速に処理する。「標準装備の管理ポータル上で、クラスタ設定やプロビジョニング、監視および管理も容易に行えます」(増月氏)。
      ※出典:IDC Worldwide Quarterly Server Tracker 2018 Q3 - Share by Company, Units and Vendor Revenue

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      図1 「Dell EMC Ready Solutions for AI - Deep Learning with NVIDIA」の外観
      コンピュートノードには4枚のNVIDIA Tesla V100 SXM2 Tensor Core GPUを実装し、100TFlopsを超える性能のPowerEdge C4140を活用。All-FlashスケールアウトNASストレージのDell EMC Isilon F800(オプション)を活用することで、大規模データセットの高速同時分析も可能になる。

    • もう1つの「Machine Learning with Hadoop」は、Cloudera Hadoopの利用を前提とした機械学習に最適化された基盤(図2)。「データ分析のフレームワークに最適化されたソリューションスタックを実装し、既存または新規のHadoop環境に、迅速に機械学習機能を導入することができます」と増月氏は説明する。

      また、ビッグデータと機械学習用のオープンソース統合データ解析エンジンとしてApache Sparkを採用。Dell EMCデータサイエンス プロビジョニングエンジンの搭載により、データサイエンティストがSparkフレームワーク上のインテルBigDL分散ディープラーニングライブラリにアクセスするためのコンテナイメージも容易に提供できる。

      2つのパッケージソリューションは実績のあるAI専門技術者チームが開発し、Dell EMC HPC & AI Innovation Labで技術検証を行い、すぐに使える状態で出荷する。「AIインフラの稼働までの時間を6~12カ月短縮し、データサイエンティストの生産性は最大30%向上します」(増月氏)。

      「Dell EMC Isilon」のAll-Flashスケールアウト設計により、大規模なデータセットにもすばやくアクセスが可能だ。競合他社と比較して、1つのクラスタで最大21倍の容量と最大18倍のスループット向上を実現するという。

      併せて提供する「Ready Solution for AI導入サービス」は、各パッケージソリューションに導入されるAI関連ツール群の使い方、選択方法のアドバイス、ベストプラクティスなどを提供するアドバイザリーサービス。「AI環境をすぐに利用できるよう支援します。お客様の要望に応じた業務立ち上げを支援するアクセラレーターサービスも提供可能です」と内田氏は語る。

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      図2 「Machine Learning with Hadoop」の外観
      サーバーには、世界で豊富な実績をもつDell EMC PowerEdge R640およびR740xdを採用。Cloudera Data Science Workbenchの活用により、コンテナ技術を用いた堅牢なエンタープライズ向けセルフサービスデータサイエンス環境も迅速・簡単に提供可能だ

    • AIソリューションの構築とビジネス実装までサポート

    • Dell EMCはアライアンスパートナーとの連携により、顧客企業のAIビジネス戦略も強力に支援する。そのパートナーの1社が、インテージテクノスフィアである。

       「約60年に及ぶマーケティングデータの調査・分析で培ったデータハンドリングのスキル、多様な統計手法や分析ノウハウ、AI開発力に加え、それらをシステム化する技術力を併せ持つのが最大の強みです」と饗庭氏は話す。

       顧客企業の課題抽出から絞り込み、最適なAIの適用、学習用教師データの作成、さらにAIを実装した仕組み・システム作りまでサポートする「AIワンストップソリューション」を提供する。

      これまでの実績と経験を基に開発した汎用ソリューションもある。「製造業における外観検査・異常検知ソリューション」はその1つだ。ベテラン技術者にしかできなかった良品/不良品判定をAIの画像識別で自動化するほか、設備・機器の予防保全や異常の早期検出なども可能になる。

      同社自身、AIインフラにはDell EMCのサーバーやストレージを数多く採用しており、その性能と信頼性は高く評価しているという。「Ready Solutions for AIによるPoCの結果をソリューションとしてビジネス実装したい。当社の人材と知見、技術力を生かし、こうしたニーズにも柔軟に対応します。グローバルにビジネスを展開するDell EMCと連携することで、海外進出を目指すお客様のAI活用ニーズにも応えていきたいです」と饗庭氏は期待を込める。

       

    • データサイエンティストの育成と分析作業の定着も支援

    • データから価値を生むためには、AIインフラだけでなく、データサイエンティストの力も欠かせない。そのデータサイエンティストは、将来的に国内で25万人が不足すると見込まれている。人材の確保は今後ますます難しくなる。

      この課題解決に向け、Dell EMCはデータサイエンティストの育成サービスも提供する(図3)。「自律的にAI・データサイエンス業務を実施できる人材を最短6カ月で育成します。さらに、AI・データサイエンス組織の設計と立ち上げを通じて、データサイエンティスト、IT部門、事業部門の緊密な連携と互いのギャップ解消を支援し、AI・データサイエンス活用業務の定着と自走化に貢献します」と内田氏は説明する。

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      図3 データサイエンティスト育成サービスの概要
      クラスルームトレーニングやOJTを通じて、成果を生む実践的なデータサイエンティストを育成する。育成期間は最短6カ月。組織作りを見据えた、データサイエンス業務の定着・自走化まで支援できる

      Dell EMCはReady Solutions for AIの提供に伴い、Dell EMCカスタマーソリューションセンター内に「PowerEdge AI エクスペリエンスセンター」を設置した。同センターでは、AIインフラの導入を検討中の顧客企業、AIを活用したソリューション開発を計画しているプロバイダがDell EMCのAIソリューションを体験できる。「お客様によるAI活用の課題抽出のほか、パートナー連携による新たなAIソリューションの開発を進めていきます」と増月氏は展望を述べる。

      AIによる新たな価値創出を図るためには、ビジネス実装のソリューション化を視野に、AIインフラの立ち上げとPoCによる効果検証を迅速に回していくことが重要だ。組織・人材を含めた体制整備も欠かせない。

      Dell EMCはReady Solutions for AIやデータサイエンティスト育成サービス、インテージテクノスフィアをはじめとするパートナーとの連携により、AIの「期待」を「価値」に変え、お客様のビジネス成長に大きく貢献していく考えだ。

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    • 日経BP社の許可により、2019年1月31日~ 2019年3月5日掲載 の 日経 xTECH Special を再構成したものです。