「NVIDIA Omniverse」で設計開発のリモートコラボレーションを今すぐ始めよう!

コロナ禍による外的環境の変化を受け、設計開発業務のリモートコラボレーションの実現を急ぐ現場が増えている。こうした中、注目を集めているのが「NVIDIA Omniverse Enterprise」だ。この待ったなしの状況において、Omniverseの活用による業務プロセス変革、新たな3Dワークフローの確立を早期に実現するにはどうしたらよいか? その実現を支えるのが「Omniverse Starterパッケージ」だ。

2020年初頭から今なお収束に至らないコロナ禍による急激な外的環境の変化を受け、製造業の設計開発においてもリモートワークやハイブリッドワークが浸透するとともに、遠隔地にいるメンバー同士の共同作業/リモートコラボレーションのニーズが急速に高まっている。

こうしたリモートを中心とするワークスタイルの変化や業務プロセスの見直しが進む一方で、さまざまな課題も顕在化し始めている。まず、複数の関係者がそれぞれ異なるツールを用いて共同作業を進めることになるため、その連携をどう実現するかという課題だ。次に、大規模データの扱いや複数拠点間でのやりとりが煩雑になり非効率である点が挙げられる。そして、製品開発において欠かせない実機や試作品を用いた評価をリモート環境下でどのように実現するかも重要な課題となる。


設計開発業務のリモートコラボレーションの実現で直面する課題
1.異なるツール群との連携
2.大規模データや複数拠点間の非効率な作業
3.実機/試作品の評価方法


もっともこれらの課題は今になって注目され始めたわけではない。コロナ禍以前から設計開発現場の働き方改革が求められる中で検討されてきたことだ。それにもかかわらず、今なおこれらの課題が解消されていないのはなぜだろうか。

現在の市場では、製品のさらなる短納期化の要求に伴う開発サイクルの高速化や、製品の多様化が進行している。そのため、多くの企業は開発プロセスの高度化とともにリードタイムの短縮に最優先で対応せざるを得ず、上記のような課題の解消にまでなかなか手が回らなかったのが実情だ。

そこに突如訪れたのがコロナ禍であり、リモートコラボレーションのニーズが急速に高まったことで、いよいよこれらの課題解決が待ったなしの状況になったのである。

リモートコラボレーションを実現する理想の設計開発環境とは

現状、リモートワークや異なる拠点間の共同作業を効率化するツールは存在するが、これらは先に挙げた「異なるツール群との連携」「大規模データや複数拠点間の非効率な作業」「実機/試作品の評価方法」の3つの課題を総合的に解決できるものではない。

そこで今求められているのが、設計開発のリモートコラボレーションを実現するためのソリューションだ。その理想的な姿について、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC) エンタープライズビジネス企画室 デジタルビジネス推進第2部 ワークシフト推進第2課 課長の山口真氏は「既存ツールのライセンスを生かしつつ、CADやBIM/CIM、空間デザインまで行え、コラボレーションとシミュレーションの可視化が可能で、フォトリアリスティックな仮想空間を構築できることが求められます」と述べ、これらを可能にするソリューションの活用が、設計開発業務のリモートコラボレーションの実現に欠かせないという。

そして、この理想的な環境、課題解決を実現するソリューションとして、今注目を集めているのが「NVIDIA Omniverse Enterprise」(以下、Omniverse)だ。

「NVIDIA Omniverse Enterprise」の概要について。 提供:エヌビディア

「インダストリアルメタバースのコンセプトを体現し、仮想空間内で設計開発をシミュレーションすることを可能とするOmniverseは多くの企業から求められてきたシステム環境であり、製造業に課題解決とデジタル変革をもたらすソリューションになり得ると考えています」と山口氏は説く。

設計開発に変革を起こす「NVIDIA Omniverse」

エヌビディア エンタープライズマーケティング シニアマネージャの田中秀明氏

Omniverseとはいかなるものなのか。端的に言えば“仮想空間上で3Dモデルを共有し、複数のメンバーで閲覧や編集などの共同作業を実現できるプラットフォーム”である。

エヌビディア エンタープライズマーケティング シニアマネージャの田中秀明氏は、その仕組みを次のように説明する。「キーとなっているのは『3D仮想世界のHTML』とも称されるUSD(Universal Scene Description)というデータフォーマットです。拡張性に優れ、主要なソフトウェア間のアセット交換を容易にするのが特長で、機械系や建築系など業界の主要なCADで作られた3Dモデルが自動的にこのUSDに変換され、Omniverseの仮想空間に再現されます。さらに、この3Dモデルに対して、NVIDIAのRTXテクノロジーを組み合わせることで、フォトリアルなレンダリング処理を施したグラフィックスやAI(人工知能)を活用したシミュレーションをリアルタイムで実行できます」(田中氏)。

Omniverseには、さまざまな3D CADソフトウェアやCGツールなどと連携するためのインタフェースとして、双方向コネクターや一方向コネクター、Omniverse DriveによるUSD変換、サードパーティーコネクター、エクスポート/インポートなどの仕組みを用意している。

さらに新機能として、一般的なCADデータフォーマットの他、主要な商用3D CADのネイティブデータをOmniverseに直接読み込むことができる「CADコンバーター」も用意しており、既存の設計資産を有効活用しながらのリモートコラボレーションを実現することも可能だ。また、VR(仮想現実)ヘッドセットやタブレット端末などを用いて、フォトリアリスティックな3Dオブジェクトを実物大で再現し、没入型の仮想空間の中で操作したり、評価/レビューを行ったり、そのまま設計変更をかけてリアルタイムにその結果を確認したりといったことが実現できる新機能「Omniverse Create XR Beta」も備える。

「CADコンバーター」を使うと3D CADのネイティブデータをOmniverseに直接取り込むことができる。 提供:伊藤忠テクノソリューションズ

「Omniverseによって実現される産業用デジタルツインの下で、これまでの常識を超えたデザインコラボレーション、3Dワークフローを実現できます」と田中氏は訴える。

目的に応じた「NVIDIA Omniverse」環境の短期導入を支援

伊藤忠テクノソリューションズ エンタープライズビジネス企画室 デジタルビジネス推進第2部 ワークシフト推進第2課 課長の山口真氏

設計開発業務のリモートコラボレーションの実現で直面する課題の解決は待ったなしの状態にある。そのため、今すぐにでもOmniverseを活用し、設計開発のリモートコラボレーションを実現したいという設計開発現場も多いことだろう。

その際、「既にOmniverseで利用したいデータやシステム環境、ユーザー数など、具体的な活用イメージを持たれているのであれば、CTCではその要求にマッチした最適なハードウェア構成ならびにサイジングを行ったOmniverse環境を、すぐにでも提案することが可能です」と山口氏は語る。

ただ、3Dデータ統合後のデジタルツイン検討においては活用イメージが固まっている企業は、むしろまれなのが現実ではないだろうか。山口氏によると、Omniverseに大きな可能性を感じつつも、具体的な用途や活用方法を模索している段階にある企業も多く、「自社のデータを取り込んで何ができるか試したい」「Omniverseを利用できる端末がない」といった相談や「自社に有効な使い方をプロフェッショナルと一緒に検討したい」との声が寄せられているという。

そこで、こうした声に応えるべく、CTCが2022年7月25日に提供開始したのが「Omniverse Starterパッケージ」だ。その名の通り、スモールスタートでOmniverseの利用環境を短期間で導入できるソリューションパッケージで、「Omniverseで実現できることを、実際に目で見て、触れて、体感することで、お客さまのやりたいこと、やれることをより明確にし、次のステップに進むことができるのがこのパッケージの1つのポイントです」と山口氏は語る。

具体的に、Omniverse Starterパッケージは、14人まで同時に使用できるOmniverseのライセンス、NVIDIAのGPUを搭載したデル・テクノロジーズ製ワークステーション、CTCによる導入/活用支援サービスの3つで構成されている。最小構成での導入であれば260万円から利用できる。

Omniverse Starterパッケージに含まれる導入/活用支援サービスでは、テーマ設定、製品導入、操作教育、運用支援がセットになっている。まず、Omniverseの機能や活用事例の紹介から入り、ユーザーが仮想空間で実現したいテーマを策定するためのワークショップを実施。その結果を基に、用途に合わせた最適なハードウェアを選択/導入するとともに、操作トレーニングを行う。そして、再度のワークショップの実施やデータ活用支援によって運用開始をサポートする。また、導入/運用開始後も、仮想空間や3Dデータに関する専門知識を持つCTCのエンジニアが、Omniverseの活用を継続して支援するサービスもオプションで提供する用意がある。

「このようにOmniverse Starterパッケージは、お客さまのテーマ設定から製品導入、操作スキルの習得、運用までの取り組みを、CTCが一貫して伴走して支えていくことが最大の特長となっています」と山口氏は強調する。

「NVIDIA Omniverse」の利用に最適なワークステーション環境

デル・テクノロジーズ クライアント・ソリューションズ統括本部 ビジネスディベロップメント事業部 アウトサイドスペシャリスト マネージャーの二宮利人氏

CTCは、Omniverse Starterパッケージで選択可能なワークステーションとして、「Dell Precision 3660 Tower」「Dell Precision 7920 Tower」「Dell Precision 7670」の3モデルを用意している。

Omniverse Starterパッケージのハードウェアに、Dell Precisionが採用された理由について、デル・テクノロジーズ クライアント・ソリューションズ統括本部 ビジネスディベロップメント事業部 アウトサイドスペシャリスト マネージャーの二宮利人氏は「一言でいえば、長年の信頼と実績にあると自負しています。Dell Precisionが発売されたのは今から25年前の1997年のことで、それぞれの時代の最先端テクノロジーを取り入れながら拡張を続けてきました。その結果、国内およびグローバルのワークステーション市場において、常にトップクラスのシェアを獲得しています。今回のOmniverse Starterパッケージは、SIerとして豊富な経験と高い技術力を持つCTC、GPU/ソフトウェアベンダーとして市場をけん引し続けるNVIDIA、そして、ワークステーション/プラットフォームベンダーとしてのデル・テクノロジーズの3社の強みを最大限に生かした取り組みだと感じています」と胸を張る。

販売開始から25周年を迎えた「Dell Precision」ファミリー。 提供:デル・テクノロジーズ

Omniverse Starterパッケージで選択可能なDell Precision 3660 Towerは、GPUに「NVIDIA RTX A5500」を搭載したタワー型のワークステーションで、非常にコンパクトな筐体でありながらも高いパフォーマンスを発揮する。また、CPUの発熱に対応するため「水冷オプションも選択可能」(二宮氏)とのことだ。Dell Precision 7920 Towerは、GPUに「NVIDIA RTX A6000」を2基搭載するハイエンドなタワー型ワークステーションで、Omniverse Create XR Betaにも対応可能なモデルである。そして、Dell Precision 7670は、GPUに「NVIDIA RTX A4500」を採用した16インチディスプレイ搭載のノート型ワークステーションで、モバイル環境からでもストレスなくOmniverseを利用できるのが特長だ。

ここまで、Omniverseおよびその短期導入を支援するOmniverse Starterパッケージの特長について紹介してきたが、より具体的なOmniverseの活用法やDell Precisionワークステーションの詳細について、ダッソー・システムズ主催の「3DEXPERIENCE WORLD JAPAN 2022」(オンライン配信:2022年11月14日~12月4日)で聞くことができる。CTCによる「NVIDIA OmniverseによるCADデータのデザインレビュー・デジタルツインへの応用」と題するセッションでは、先に紹介したCADコンバーターを用いてSOLIDWORKSのCADデータを直接Omniverseへ取り込み、デザインレビューやシミュレーション、点群などの他データとの組み合わせによるデジタルツイン化について解説が行われるとのことだ。

この記事はMONOist (https://monoist.itmedia.co.jp/)に2022年10月に掲載されたコンテンツを転載したものです。
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2210/24/news005.html

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