なぜモバイルワークステーションが注目されるのか? その理由と実力は?

既に出荷台数の6割近くを占めるモバイル型のワークステーション

この1年、テレワークへの移行が契機となり、一気にモバイル端末へのニーズが高まった。高度な処理能力が求められるワークステーションの領域でも、これは例外ではない。

モバイルワークステーションの躍進を如実に示しているのが、「IDC Workstation Tracker 2021Q1」の調査結果だ。全世界のマーケットではワークステーションの出荷台数がこの1年間で25%以上増えており、そのうち6割近くをモバイル型が占めているのである。

以前は「タワー型やデスクトップ型でないと十分な処理性能は確保できない」と考えるエンジニアやデザイナーも少なくなかったが、実際に在宅勤務でモバイルワークステーションを使い始めた結果、「モバイル型でも十分業務ができる」という認識が世界的に広がっているのだ。

これに加え、「在宅勤務以外の業務」でもモバイルワークステーションを適用する企業も増えている。持ち運びやすさという利点を生かし、建設現場や生産現場などでのデータ分析や、顧客へのプレゼンテーション、会議室での設計検討などはその一例だ。また、エンジニアリング以外でも、営業用動画コンテンツの制作に、一般的なPCよりも動画処理性能の高いモバイルワークステーションを採用するケースも登場している。モバイルワークステーションの性能を実感する人が増えた結果、その利用シーンが確実に増えつつあるわけだ。

実際「モバイルワークステーションを検討したい」「モバイルワークステーションの導入数をさらに増やしたい」という企業も多いのではないだろうか。ここで注意したいのが、モバイルワークステーションもほかのIT機器と同様に、進化を続けているという点だ。新たに導入するのであれば、製品の最新状況がどうなっているのかを知ってから意思決定することをお勧めしたい。

現在多くの製品が市場に投入されているが、その中でも注目したいのが、グローバルでの出荷台数が14期連続No.1(※)となっている、デル・テクノロジーズのDell Precisionワークステーションだ。ここでは2021年6月中旬に一新された同社のラインアップを俯瞰しつつ、モバイルワークステーションの最前線について紹介したい。

※ 出典:IDC Worldwide Quarterly Workstation Tracker 2017 Q4 – 2021 Q1 Share by Company

出荷台数14期連続世界No.1を誇るDell Precisionワークステーション。その最新モデルの実力は?

まずはデル・テクノロジーズが提供する「Dell Precisionモバイルワークステーション」の、新ラインアップの全体像を見ていきたい。これを示したのが下の図である。

図1●「Dell Precisionモバイルワークステーション」の新ラインアップ全体像

フラッグシップの7000シリーズ、スペシャリティの5000シリーズ、ハイコストパフォーマンスの3000シリーズで構成されており、それぞれ2モデルずつ用意されている。なお3560は既に2021年1月に発表済みのモデルだ
デル・テクノロジーズ株式会社 クライアント・ソリューションズ統括本部 クライアント製品本部 フィールドマーケティング シニア・アドバイザー 湊 真吾氏

「当社のモバイルワークステーションには大きく3つのラインがあります。フラッグシップモデルとなる7000シリーズ、スペシャリティモデルとなる5000シリーズ、ハイコストパフォーマンスモデルとなる3000シリーズで構成されており、それぞれ2機種が用意されています。なおそのうちDell Precision 3560は、既に2021年1月に発表済みのモデルです」と説明するのは、同社の湊 真吾氏だ。

これらの中でまず注目したいのが、フラッグシップモデルの一翼を担う「Dell Precision 7560」だ。

これは世界で処理性能を極限まで高めた15型ワークステーション。CPUには第11世代Intel Core™プロセッサー(H Series)またはIntel Xeon Wプロセッサーを選択可能だ。GPUはCUDAコアを6144装備したNVIDIA RTX™ A5000(90W)まで対応。「前モデルであるDell Precision 7550はNVIDIA Quadro RTX 5000まで対応しており、CUDAコアは3072だったので、これだけでも2倍の処理性能を持つことになります」(湊氏)。

周辺機器接続は、Thunderbolt 4とUSB3.2 Gen2に対応。これにより、従来のThunderbolt 3に比べ、より高速な接続が可能になった。またストレージに関しても、3つのM.2 PCIe NVMe SSDを搭載可能になっており、PCIe Gen4スロットも装備。ディスプレイはAdobe色域を100%表示できる、ミドルクラスのDisplayHDR 600を選択可能だ。

7000シリーズのもう1モデルとなる「Dell Precision 7760」は、CPUは7560と同様である一方で、GPUはNVIDIA RTX™ A5000(115W)まで対応し、4つのM.2 PCIe NVMe SSDを格納可能。またディスプレイサイズが17型と大きくなるため、選択可能な規格はDisplayHDR 400までとなるが、Adobe色域は100%表示でき、リフレッシュレートは最大120Hzとなる。「GPUにA5000の115Wを選択できるのは、ほかの製品にはない特徴だといえます」(湊氏)。

「17型世界最小」を支える独自の排熱技術

次はスペシャリティモデルである「Dell Precision 5560と5760」だ。前者は最小重量1.84kg~という15型モバイルワークステーション、後者は最小重量2.13kg~という世界最小の17型モバイルワークステーションだ(※)。

CPUはいずれも第11世代Intel Core™プロセッサー(H Series)またはIntel Xeon Wプロセッサーを搭載。GPUは、5560が2560のCUDAコアを持つNVIDIA RTX™ A2000またはT1200に対応。一方、5760は4096のCUDAコアを持つNVIDIA RTX™ A3000またはA2000に対応している。従来モデルはCUDAコアが1024または1920だったので、これらのモデルでもCUDAコアが約2倍になったことになる。

周辺機器接続は、5560が2つのThunderbolt 4 Type-Cポートと1つのUSB Type-Cポートを、5760では4つのThunderbolt 4 Type-Cポートと2つのUSB Type-Cポートを装備している。なお5560は近接センサーも搭載しており、ユーザーが離れたときの画面ロック、ユーザーが近づいたときのアンロックを、自動的に行える。そのため認証がより簡単になり、在宅勤務や外出先でのセキュリティも確保しやすくなっている。

特に注目したいのは、17型モデルの5760がデル独自の「DOO(対向送風)ファン」を搭載している点だ。

図2●Dell Precision 5760が搭載するデル独自の「DOO(対向送風)ファン」

1つで2つの送風方向を持つファンによって、より効率的な排熱を実現している。このような工夫によって「17型で世界最小」のワークステーションが可能になった

一般的なファンは風の吹出口が1つしかないが、DOOファンは2つの方向へ同時に風を送ることができる。これによって本体内の空気の加圧範囲を拡大し、より効率的な排熱を実現しているわけだ。これに加え、面方向の熱伝導率が極めて高いグラファイトを利用した熱移動や、超薄型で高い熱拡散能力を持つベイパーチェンバーなども戦略的に活用。高性能ワークステーションでは排熱がサイズの限界を決めてしまうことが多いが、このような様々な排熱処理の工夫によって、「17型で世界最小」が実現されているのである。

※ 出典 デル・テクノロジーズ調べ

サステナビリティへの積極的な取り組みも魅力の1つ

最後に紹介するのが、ハイコストパフォーマンスモデルの「Dell Precision 3561」だ。これもほかのモデルと同様に、CPUは第11世代Intel Core™ プロセッサー(H Series)またはIntel Xeon Wプロセッサーを搭載。GPUは1024のCUDAコアを持つNVIDIA T1200またはT600 に対応している。旧モデルではCUDAコアが512だったので、ここでも2倍になっている。

周辺機器接続は、Thunderbolt 4 Type-CとUSB3.2 Gen1を各2ポート装備。ディスプレイはHDとFull HD(FHD)に加え、Ultra HD(UHD)も選択可能だ。FHDまたはUHDを選択した場合には、ハードウエアによるブルーライト低減も可能。色味を変化させることなく目に有害な光を抑制できる。さらに5760と同様にDOOファンを搭載していることも、注目すべきポイントだといえるだろう。

ここまで見てきたように、デルの最新モバイルワークステーションはすべて、最新のIntel®プロセッサーを搭載し、GPUも従来モデルに比べ、いずれもCUDAコアが2倍になっている。パフォーマンス面で大きな躍進を遂げていることが分かる。加えて全モデルで、AIベースでパフォーマンスを最適化できる「Dell Optimizer for Precision」が無償搭載されている。その最新版では本体の最適化だけではなく、ネットワークの最適化も可能になったという。

もう1つ大きなポイントとなっているのが、サステナビリティの推進においても、積極的な取り組みが行わ

図3●デル・テクノロジーズが推進しているサステナビリティへの取り組み

製品にもリサイクル素材を積極的に活用しており、Dell Precision 3561のカバーは新規プラスチック比率が約50%にまで削減されている

「デル・テクノロジーズ製品は、以前からEPEAT Gold認定やENERGY STAR認定を受けており、リサイクル素材や再生可能素材の活用や、ライフサイクル全体で発生する二酸化炭素排出量削減に、積極的に取り組んできました。今回はこれをさらに推し進めています。例えばDell Precision 3561のカバーでは、再生プラスチックに加えて木材由来のバイオプラスチックを採用。従来モデルでは新規プラスチック比率が70%だったところを、約50%にまで削減することに成功しています」(湊氏)

今後もモバイル端末の需要はさらに高まっていくはずだ。今後導入を検討しているのであれば、可搬性や処理性能に加え、環境性能も考慮した上で自社に最適なモデルを選択することをお勧めしたい。

日経BP社の許可により、2021年6月29日~ 2021年9月27日掲載 の 日経 xTECH Active Special を再構成したものです。

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