企業が取るべき変革の進め方。DXの成否を左右するデータファースト戦略のススメ

現在は「VUCA」の時代といわれる。さらに近年は、新型コロナウイルスの影響により、企業の置かれる環境は目まぐるしく変化し、先を見通すことはさらに難しくなった。このような状況のもと、多くの企業が取り組んでいるのがデータの利活用だ。既に各業界のリーダー企業は「データファースト」戦略へ移行しており、DXの潮流は、加速度的に増えるデータをどう企業価値に変えるかがメインテーマになりつつある。そこで本稿では、データ活用に向けた支援を行う先駆者にインタビュー。今後不可欠となるデータ中心のIT戦略やデータ基盤のあるべき姿について考えてみたい。

CASE 01 株式会社ネットワールド

データ利活用のカギを握るストレージ
DXに悩む企業の“泣き所”を解消するには

データドリブン経営によるDXが加速する中、そのデータ基盤となるストレージには高度な要求が課せられている。新たなワークロードへの対応や拡張性、データアクセス・運用のシンプル化などはその一例だ。その期待に応える次世代ストレージとして注目を集めているのが、デル・テクノロジーズの「Dell EMC PowerStore」だ。同製品をベータ機の段階から徹底的に検証し、顧客やパートナー企業への導入支援を行ってきたネットワールドと、デル・テクノロジーズのキーパーソンがその革新的な技術やメリット、パートナー企業への提供価値について語り合った。

ユーザーの理想が「全部入り」のデータ基盤とは

株式会社ネットワールド
マーケティング本部 副本部長
インフラマーケティング部 部長
平松 健太郎氏
マルチベンダーのストレージ、HCIなども含めたインフラ製品全般のマーケティング主管を務める。また各製品のエキスパート、プリセールスエンジニアと共にユーザーやリセラーの課題解決も支援している

デル・テクノロジーズ 石塚 DXを推進する多くの企業が直面しているのが、インフラ管理の複雑化です。オンプレミスからクラウドへの移行が進む一方で、一度移行してもメリットが出なかったシステムを引き上げる「オンプレミス回帰」の動きも活発化しています。そのためクラウドとオンプレミスの相互利用や、多様化するアプリケーションによる運用管理の負担が増大しています。IT人材が不足する中では非常に頭の痛い問題です。

ネットワールド 平松 データ利活用の拡大で、今までストレージ管理に特化していた担当者が、ハイブリッドクラウドやオンプレミスの仮想基盤も含めたインフラ全体を管理しなくてはならない状況が出ています。その中で多様なデータが持つポテンシャルを引き出し、継続的なコスト削減も図っていくには、高度に統合されたストレージをシンプルに運用できる環境が必要です。そうした新世代のストレージとして我々が注目しているのが「Dell EMC PowerStore」です。

石塚 我々はDell EMC PowerStore(以下、PowerStore)を「次世代ストレージ」あるいは「次世代レディ」と表現しているのですが、平松さんは「新世代」という言葉を使っていますね。

平松 PowerStoreは既に、今の時代に最もマッチしたストレージとしてお客様に受け入れられつつあります。なので「新世代」のほうがしっくりくるのです。もっというなら「進化するストレージ」のほうが適切かもしれません。卓越したパフォーマンスはもちろん、エンド・ツー・エンドでのNVMeサポート、優れた重複排除機能とそれを保証するサービス、そしてコンテナアーキテクチャによる新技術の取り込みが可能といったように、ユーザーが求める高パフォーマンス、高効率、高適用性を革新的な価格で提供されている。まさにユーザーの理想が「全部入り」になっているストレージだと評価しています。

データ価値を最大限に生かすアーキテクチャ

デル・テクノロジーズ株式会社
インフラストラクチャ・ソリューションズ事業統括
パートナー企業セールスエンジニア
石塚 智規氏
パートナー企業とともに、サーバー/ストレージ/ネットワーク全般の製品導入を進めていくプリセールスSEの業務に従事

石塚 PowerStoreは高速なNVMeでパフォーマンスを最大化するように設計されています。価格設定が数千万となる当社のハイエンドストレージは既にNVMeに対応していましたが、数百万からの価格帯でNVMeにネイティブに対応したミッドレンジストレージは初となります。オールフラッシュのストレージは、基本的にパフォーマンスを気にする必要がなくなるので、どんなアプリケーションに対しても安心感があります。

ワークロードに関しても、FC/iSCSIとNFS/SMBに加えて、NVMe over Fabricsもサポートしています。この接続プロトコルを使うと帯域幅が広がり、低レイテンシを実現できるので、トランザクションが突発的に増えたときも非常に対応しやすくなります。

平松 VDIなどのアプリケーションには特に効果がありますね。

石塚 VDIでは始業時などの時間帯でログオンストームと呼ばれる爆発的なI/Oが発生し、業務レスポンスが大幅に低下してしまいますが、NVMe over Fabricsなら安定的に稼働できます。従来のようにストレージを並列化する必要もなく、コンパクトかつ低コスト・低電力にVDIシステムを構築可能です。

平松 重複排除機能も、従来の製品と比較すると群を抜いて高いレベルにあります。データを高効率に集約できるので電力削減にもつながるし、フットプリントも小さくなる。VDIだけでなく監視カメラや生産設備などからの大量のI/Oを処理するエッジコンピューティングにも向いているストレージです。

石塚 TCOの観点でいうと、HDDがメインのストレージは動態パーツが多く、ストライプボリュームで多くのHDDを並列に動作させるため、どうしても故障箇所が増える傾向にあります。その点、PowerStoreはSSDやNVMeなどのフラッシュドライブを最適に使えるようにディスク管理のアーキテクチャを刷新しているので、フラッシュドライブのパフォーマンスを十分に発揮できます。さらに、HDDに比べて動的なパーツが少ないフラッシュドライブを採用することで故障箇所が少なくなり、劇的に交換頻度や工数が減ってTCO削減につながります。

さらにコンテナベースのモジュラー設計となっており、提供する機能ごとに独立しているため、将来の機能アップデートや不具合修正が容易になります。ほかのサービスにインパクトを与えることなく、どんどん機能を高めながら長く使っていただける。まさに平松さんに表現いただいたように「進化するストレージ」です。

継続的な利用を支えるサービスも充実

平松 PowerStoreは、製品だけでなく継続的な利用を支えるサービスでも定評があります。我々にとっても、お客様に安心して提供できる価値の1つです。

石塚 ありがとうございます。PowerStoreでは「Future-Proof Program」、「Dell EMC Anytime Upgrade」と言う2つのサービスプログラムを提供していて、それを支える重要なアーキテクチャである「スケールアウトアーキテクチャ」があります。

まず1つ目の「Future-Proof Program」は、重複排除によるデータ削減効果4分の1を保証するサービスです。搭載しているディスク容量の4倍が使える環境を、保証期間中ずっとデル・テクノロジーズが保証します。特別な費用は発生せず、覚書きへのサインのみで契約でき、複雑な事前コンサルティングなども不要です。

平松 ストレージにおける重複排除は、もはや一般的な機能です。しかし、お客様環境に導入すると「メーカーがPRするほど減っていない」と感じるケースが多々あります。その不満や心配を無くし、問題が発生した場合はほぼ無条件にディスクやエンクロージャを追加するなどして保証するというサービスは、他社では例がありません。機能に対する自信の表れだと思いますが、これを使わない手はないですね。

石塚 2つ目にDell EMC Anytime Upgradeは、PowerStoreのCPUやメモリ容量を強化・拡張できるサービスです。こちらは有償で、機器購入時に加入し保守契約期間内に利用いただく形になっています。

利用法は2つあります。1つはサービス名のようにアップグレードに利用する方法。I/Oが予想以上に増えてきた、あるいはアプリケーションが変わり、想定していたストレージコントローラのパフォーマンスでは処理しきれなくなった場合、上位モデルや次期モデルに無停止でアップグレードできます。

もう1つが拡張時に利用する方法です。PowerStoreは複数台のアプライアンスをまとめて管理できるストレージクラスタが組めますが、そういった拡張時における新しいPowerStoreの購入費用を、事前にお支払いいただいていたアップグレード費用から充当することができます。いずれも180日経過後であれば、いつでも利用可能です。

平松 上位コントローラへの交換だけでなく拡張も含め、柔軟なオプションとして対応しているわけですね。

石塚 はい。いまお話ししたDell EMC Anytime Upgradeをさせるアーキテクチャとしてスケールアウトアーキテクチャが重要になります。保守期間が切れたり、システムとしてリプレースが必要になったりしたときも、データ移行に悩むことなく安心して移行できるアーキテクチャです。対象となるホストやサーバーから、VMwareなどで使っていたI/Oも停止させることなく、データをそっくりそのまま引っ越すことができます。デル・テクノロジーズの過去のストレージ製品からの移行も数クリックで簡単に行えます。

平松 PowerStoreなら、1つの管理体系の中にオンプレミスで乱立していたストレージやワークロードをすべて集約できるようになる。しかもコントローラの強化や柔軟なスケールアップ/スケールアウトで、将来的にもシンプルかつ安心にビジネスを継続できる。これはお客様にとって非常に嬉しいメリットだと思います。

顧客視点でマルチベンダーのシステムを徹底検証

石塚 PowerStoreは自信を持ってお勧めできる製品ですが、そのメリットを理解されたとしても、いきなり導入するのはハードルが高いというお客様、PowerStoreでお客様のシステムをどう最適化していけばいいのか分からないというパートナー企業がいらっしゃるのも事実です。そういった悩みや課題をトータルに解決できるディストリビューターがネットワールドです。ネットワールドの強みを改めて教えてください。

平松 弊社の特徴は、企業のITインフラ構築に必要かつ十分な製品群をディストリビューションするだけでなく、社内のSEが先進的な製品とそれを活用したソリューションを提案し、幅広いメーカーの製品とともに高い付加価値を提供することにあります。

そのため、お客様やパートナー企業に成り代わり、本当にその製品が「メーカー側が謳っている性能や機能を担保しているのかどうか」、「その機能や性能がどのようにお客様のビジネスに役立つのか」を我々自身の目で確かめることをモットーにしています。ストレージについても、デル・テクノロジーズを始め、各メーカーの中核的な製品はほぼすべて検証機として取りそろえてあります。

石塚 私たちの検証環境には当社の製品しかありませんが、ネットワールドの検証環境には全メーカーの製品がすぐに使える状態でそろっている。これが大きな違いですね。

平松 当社の技術検証センターである「PIC(プリ・インテグレーション・センター)」には、サーバーやネットワーク機器も含めてマルチベンダーで検証機を取りそろえています。ストレージ単体としての機能や操作性を比較できるだけでなく、異なるストレージ間のデータ移行、他社製サーバーやクラウドとの連携、プロトコルが異なるネットワークスイッチとの接続など、様々な環境やパターンを検証することができます。検証機は、お客様やパートナー企業に広く貸し出しており、検証センターのスペースも基本的に無償でお使いいただけます。自社が持つ業務データやアプリケーションを使って、迅速かつ効率的にシステム検証を行っていただけます。

石塚 ネットワールドの技術者だけではなく、外部のSE、開発者も実機を使って試せるのは、すごい価値だと思います。カタログや資料を見るだけでは分からない操作性、トラブルが起こった際のステータスまで見て確認できるのは非常に助かるはずです。

平松 ただしコロナ禍以降、お客様に直接センターに来ていただき検証する形がとれなくなっているのが残念です。現在はリモートからログインして操作できる「リモート貸出」や「リモートハンズオン」の環境を整備していますので、ぜひご活用いただきたいですね。

中核的な製品にはベータ機から開発に参画

石塚 製品へのかかわり方も非常に深く、中核的な製品についてはベータ機の段階から開発に参画されていますね。当社のエントリークラスのストレージについては日本で唯一のベータテスターになることが多く、本国の開発者とも直接コミュニケーションすることで、機能の背景やドキュメントにないアーキテクチャも深く理解されています。

平松 デル・テクノロジーズに限らず、パートナー企業シップの中で公開していただける製品についてはベータ機もしくは開発段階から様々な形で参加しています。日本のお客様ニーズに合わせるには、こういった機能が必要ではないか、こんなアプローチが有効なのではないかといった助言もさせていただき、製品版ではそれを反映していただくことも多いですね。

石塚 各社の製品に、そこまで深い踏み込みをされているディストリビューターはほかにあまり例がありません。あくまでもお客様目線で公正中立、悪いところは悪いときちんと指摘される。さらにそういった情報やノウハウを社内で閉じず、オープンに公開している点も特徴ですね。

平松 お客様の要望に合わないもの、改善が必要な製品を無理に勧めても誰もハッピーになれません。どの製品も、良い点・悪い点ははっきりさせたほうがいいですし、それをメーカー様や外部のお客様、パートナー企業にもきちんと公開していかないと、逆に我々の信用が得られないと考えているからです。

石塚 もう1つ、パートナー企業に対する新しい取り組みとして「置き配」サービスにも注目しています。

平松 「置き配」とはパートナー企業に代わり、ネットワールドの技術者が製品独自の設定部分を済ませた状態で、お客様先へネットショッピングの置き配のように機器を直接お届けするサービスです。あとは、パートナー企業の技術者が弊社で用意したマニュアルに沿ってストレージの設定を行っていただけば、すぐに使えるようになります。非常に好評を博しており、PowerStoreに関しても既に多数ご利用頂いています。特に、まだ機器構成の技術資格が取得できていない、PowerStoreに関する深い知識を持ったエンジニアが育成できていないといった場合に有効だと思います。

石塚 パートナー企業にとっては最高のパフォーマンスを発揮するストレージを簡単にお客様に提供できますし、構築に関するリソースが省けた分をアプリケーション開発などの本業に向けられる。我々メーカーにとっても最高のコンディションの製品を、より多くのお客様に使っていただける大きな手助けになります。これからもネットワールド様には当社の製品開発と拡販を支援していただきたいと思います。本日はありがとうございました。

日経BP社の許可により、2022年1月19日~ 2022年2月15日掲載 の 日経 xTECH Special を再構成したものです。
https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/NXT/22/delltechnologies0119/

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