データ・マネジメントの新戦略 Vol.1 データ管理にかかわる「4つの課題」と解決に必要な「3つの戦略」とは?

デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するために、重要性が増しているデータ管理。その基盤となるストレージ製品/サービスにも、未来を見据えた変革が求められている。単にデータの格納場所という側面だけではなく、絶え間なく生じる変化に対し、最小限の資源(人・コスト)で対応できる必要が生じているのだ。それでは具体的にどのようなアプローチが求められているのか。先進的なベンダーのキーパーソンたちに、データ管理にかかわる「4つの課題」と解決に必要な「3つの戦略」について話を聞いた。

DXの加速に向けてデータ資産の「攻め」と「守り」が不可欠に

―― コロナ禍でDXへの取り組みが加速しています。これにより、データ管理やデータ活用へのニーズも変化しつつあります。これに関して、どう見ていますか。

Dell Technologies
Product Management
Senior Director
Martin Glynn 氏

マーティン・グリン氏(以下、グリン氏)私たちは千変万化する時代に生きており、データを取り巻く環境やニーズも数年前と比べただけでも大きく変化しています。価値のあるデータをどのように活用していくのか、同時にどう守っていくのか、これを真剣に考えなければなりません。

我々の調査でも、多くの企業が悩んでいる姿が浮き彫りになりました。既に92%はオンプレミスを含むマルチクラウド環境へと移行していますが、89%が運用の自動化への高い期待を持っています。

その一方で、企業データを狙うサイバー攻撃は急速に悪質化・高度化しており、攻撃を受けたときにどのように被害を回避するかも重要な課題になっています。しかし「万一攻撃を受けても問題なく復旧できる」という自信を持つIT関係者は少なく、67%は「自信がない」と回答しているのです。

―― データ管理には様々な課題がありそうですね。

グリン氏ここで紹介したのは調査結果の一部に過ぎませんが、これらを総合した結果、データが持つ大きな力を解放して革新を促進するには、大きく4つの課題が存在することが分かっています。それは「サイロ化」「サイバーセキュリティ」「開発者の生産性」「マルチクラウドの複雑さ」です。

―― これらの課題を解決するにはどうすればいいのでしょうか。

グリン氏4つの課題は、いわばデータにとっての「向かい風(headwinds)」です。これらを「追い風(tailwinds)」に変えていくには、3つのストレージ戦略が求められます。

データにとっての4つの「向かい風(headwinds)」と、それらを「追い風(tailwinds)」に変えるための3つの戦略。これを成功させるカギが「ソフトウエア」になるという

戦略1:適用性の高いソフトウエア・アーキテクチャ

―― 3つのストレージ戦略について具体的に教えてください。

グリン氏1つ目は「適用性の高いソフトウエア・アーキテクチャ(Adaptable Software Architecture)」の実現です。ソフトウエアは環境変化に応じた変更が後から追加できるため、うまく使うことでIT部門の運用管理にかかわる生産性を飛躍的に高めるとともに、潜在的なリスクを減らし、将来発生すると予測されることにも対応しやすくなります。ストレージというとハードウエアの世界だと思われがちですが、実際にはソフトウエアを基軸としたイノベーションが不可欠なのです。SDS(Software-Defined Storage)の重要性は、かつてなかったほどに高くなっています。

Dell Technologies
Product Marketing
Director
Ben Jastrab 氏

ベン・ジャストラブ氏(以下、ジャストラブ氏)こうした考えのもと、デル・テクノロジーズでは、新しい挑戦を続けています。例えば、製品の開発に際し、デザインの段階からソフトウエアドリブンであることを強く意識しています。またソフトウエアを活用したイノベーションに関しても、デル・テクノロジーズは長い歴史があり、これまで1兆円もの投資を行ってきました。特許の数も約2万6000件に達しており、ストレージ開発のスタッフもその大半がソフトウエアエンジニアです。

―― ハードウエアベンダーとして知られるデル・テクノロジーズが、ソフトウエアにこれだけの投資を続けているというのは、驚くべきことですね。

ジャストラブ氏これによって私たちは「適用性の高いソフトウエア・アーキテクチャ」を実現し、自動化やAIなど新しい技術を積極的に製品に取り込んでいます。その結果、時間のかかる業務を最大99%まで削減可能にしており、IT部門の生産性も70%向上できるようになっています。またストレージインフラで発生した問題を解決するまでの時間も、最大で1/10にまで短縮可能です。これは単に自動化を行うだけではなく、AIを活用した予測分析によって、問題が発生する前から能動的な対処が可能になっているからです。

戦略2:包括的なサイバーセキュリティ

―― 課題解決に必要な2つ目のストレージ戦略について教えてください。

グリン氏2つ目の戦略は「包括的なサイバーセキュリティ(Comprehensive Cyber Resiliency)」です。近年、サイバー攻撃の脅威は、さらに巧妙化・複雑化しています。セキュリティを担保するための対策も高度化しており、最近ではセキュリティ戦略の立案を助けてほしいと、お客様から言われることも増えています。

ジャストラブ氏このようなお客様の声にお応えするため、デル・テクノロジーズは世界でもセキュリティ技術を実装した製品を、長年にわたって提供しています。このことが評価され、サーバーではFortune 500の企業の96%がデル・テクノロジーズの製品を採用しており、ストレージでも多くの企業が当社の製品を選択しています。そしてここでもハードウエアとソフトウエアの両面での取り組みが進められています。

まずハードウエアでは、その信頼性を確保するために、ファームウエアに暗号化技術を導入しています。これによって工場出荷から客先に届くまで、第三者による改ざんが行われていないことを保証しているのです。またファームウエアのパッチも、信頼できることを保証するシグニチャ付きで提供しています。ストレージ製品を提供するベンダーでここまでやっているのは、デル・テクノロジーズ以外にはないはずです。

―― ソフトウエア面での取り組みについても教えてください。

ジャストラブ氏ランサムウエアなどの最新の脅威に、いち早く対応できる機能を装備しました。例えば、破損したデータをインテリジェント機能がいち早く検出し、管理者に警告するのはその1つです。またエンタープライズストレージでは、数千万という膨大なスナップショットを取得できるようになっており、10分ごとにスナップショットを取得した場合でも、これらのスナップショットを数週間保管可能です。ランサムウエアによってデータが破損されても、破損された数分前の状態に即座に戻せるようになっているわけです。

―― サイバー攻撃への対処も、ストレージ製品そのものが検知し、適切な対処をセキュリティ担当者にレコメンドする、といった時代が到来しているのですね。それでは、3つ目の戦略についても教えてください。

戦略3:マルチクラウド環境に対応した柔軟性

グリン氏3つ目は「マルチクラウド環境に対応した柔軟性(Multi-Cloud Ecosystem Flexibility)」です。オンプレミスとパブリッククラウドを組み合わせて使うだけではなく、複数のパブリッククラウドを使い分けることも、既に当たり前になりつつあります。このような環境の中で、どのようにコントロール性とデータの可搬性を強化していくかも、忘れてはなりません。データがどこにあるのかにかかわらず、それらから十分な価値を引き出す仕組みが必要なのです。

ジャストラブ氏この戦略に対しても、デル・テクノロジーズは既に15年以上にわたって取り組んできました。「オンプレミスで作成されたデータをパブリッククラウドに持っていくことでより大きな価値を引き出したい」というお客様のニーズに対し、その実現を支援してきたのです。データの長期保持のためにパブリッククラウドを上手に活用すれば、高い経済性を享受できます。実際にパブリッククラウド上に存在するデータのうち、10エクサバイトが、デル・テクノロジーズの技術によって保護されています。

―― パブリッククラウドの膨大な量のデータを保護しているのですね。

ジャストラブ氏パブリッククラウドに求められているのは、このような経済性の高いデータ保持だけではありません。モダンなアプリケーションはパブリッククラウドで運用されることが増えており、そこで使うデータをパブリッククラウドに移していくことも求められています。従来であればデータセンター(オンプレミス)で完結していたデータ管理を、パブリッククラウドにも広げていかなければならないわけです。

そのために当社では、オンプレミス製品で培ってきたSDSの技術をパブリッククラウドにも拡大。これによって、より分散化した環境でも、一貫性のあるデータ管理を可能にしています。

3つの戦略実現のために膨大な新機能を追加

―― これら3つの戦略を、どのような形で製品に実装しているのでしょうか。

グリン氏この戦略を具現化したのが、2022年5月に当社が世界中に発表した内容です。このアナウンスでは、大きく4つの製品のアップデートについて言及が行われました。その4製品とは、1.「Dell PowerStore」、2.「Dell PowerMax」、3.「Dell PowerFlex」、4.「Project Alpine」です。
(※1.2.3については、以下、それぞれ、「PowerStore」「PowerMax」「PowerFlex」という)

ジャストラブ氏まず「PowerStore」から見ていきましょう。これはデル・テクノロジーズが2年前に市場投入した新しいストレージ製品で、インテリジェント性が大きな特徴になっています。ストレージとして各種インテリジェンス機能を提供するのみならず、アプリケーションが動く仮想マシンをそのまま載せられるという機能も備えています。

最新リリースでは、120を超える新機能が追加されました。その中には、他製品とのデータ可搬性強化や、VMware VVolsへのネイティブ対応、ネイティブレプリケーション、サイト間をまたがるメトロ機能などが含まれています。またサイバーセキュリティも強化されており、サードパーティのセキュリティ製品との連携にも対応。前述のハードウエア/ファームウエアレベルでの改ざんも回避できるようになっています。

これらのソフトウエア機能は、既にPowerStoreを導入済みのお客様も、追加コストなしで利用することが可能です。もちろんハードウエアも強化されており、ソフトウエア機能強化との相乗効果によって、パフォーマンスは最大50%、容量は最大60%向上しています。

ジャストラブ氏次に「PowerMax」についてお話しします。PowerMaxは長い歴史を持つエンタープライズストレージ。最新リリースはこれまでの集大成の上に、約200ものソフトウエア機能が追加されています。ソフトウエア・アーキテクチャ自体が次世代型になっており、マルチノードでのスケールアウトに対応したほか、PowerStoreの特徴だったインテリジェンスや自動化、稼働状態のままコントローラーをアップグレードできる「Anytime Upgrade」も実装しています。セキュリティ面ではランサムウエアの自動検知に加え、最大6400万ものスナップショットによるデータ保護や、外部からのアクセスができない「エアギャップ型」のサイバーボールトも可能になりました。最小5RUのモジュラー型筐体でのメインフレーム対応も実現しており、3:1のデータ削減効率保証も行います。これは業界初の取り組みです。

オンプレミスの技術をパブリッククラウドにも

ジャストラブ氏次に「PowerFlex」は、SDSである「Dell EMC VxFlex」をリブランドする形で、2020年7月に発表された製品です。多様なワークロードを収容できる高い柔軟性を持つ、業界でもユニークな存在だといえます。その最新リリースでは、それまで対応してきたブロック型に加え、ファイル型のデータもサポートしました。NASを強く意識した進化を遂げています。また、一般的なHCIで見られるハイパーバイザー型の実装だけではなく、ベアメタル型にも対応しており、スーパースケーラー(パブリッククラウド)での稼働も予定しています。

ジャストラブ氏最後が「Project Alpine」です。これは2022年1月のアナウンスで初めて登場した、ストレージソフトウエアをメジャーなパブリッククラウド上で稼働させるというプロジェクト。これによってパブリッククラウドでもオンプレミスの高いグレードのストレージ機能を利用できるようになり、オンプレミスとパブリッククラウドの「いいとこ取り」が可能になります。

―― 追加された機能の数だけを見ても、かなり大掛かりなアップデートになっていますね。3つの戦略とその戦略にそった具体的な製品の強化によって、DX加速に向けたデータ資産の「攻め」と「守り」を支援していくわけですね。本日はありがとうございました。

日経BP社の許可により、2022年5月26日~ 2022年6月22日掲載 の 日経 xTECH Special を再構成したものです。
https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/NXT/22/delltechnologies0526/

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